タイトル未定 (ページ38)

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貴方side

いつもそばに居てくれた、わたしの執事
窮屈な世界から外の世界を教えてくれた人
そんな彼を好きにならない理由なんてどこにも無かった

小さい頃お気に入りの帽子が飛んで行った時
翔太に泣き付いて、探し回ってもらったなぁ、

「ほら、ちゃんと被ってろよ」

『ううっ、ありがとう』

9個上の彼は、まだ子どもだったけど
私からしたら随分と大人に見えていた

優しいけど不器用で、跪いて被せてくれたっけ……

「おい、朝だぞ、いつまで寝てんだ」

『うーー、うるさい』

彼の素顔を知った時は私はまだ幼かったけど、正直驚いた
両親の前ではいつも笑顔で何でもこなしている様子だったのに私の前では素で話してくれた

『昔は私にも敬語で優しかったのにねっ』

「なんだそれ、そっちの方がいい訳？」

『なによ』

「お嬢様、朝食の用意が出来ております」

『……似合わないね』

「お前だって昔はもっと可愛かったくせに」

『なっ、ばーか!!』

なによそれ、昔は可愛かったとか。
髪の毛を軽く整えながら両親の待つ部屋に向かった

「おはよう、A」

『おはよう』

「奥様、旦那様、おはようございます」

「いつもAの事起こしてくれてありがとう、翔太」

「いえ、これも役目ですから」

みんなの前だけ、猫被っちゃって
両親に見えないように、威嚇すると舌を出して煽ってくる翔太

「起こしてもらうのも、今週いっぱいで良さそうだ」

「え?」

『そうね、来週からは私ひとりで……』

「Aに縁談が来て、それを受けるつもりだ」

『…は、ちょっと何言ってんの』

意味が分からなかった
縁談を受けるって、私の気持ちは?

「この後、直接お会いする事になってる」

『待ってよ、私一言も』

「決定事項だ」

『……っ、』

昔から父の言葉には逆らえず、従うしかなかった
そんな私を慰めてくれるのはいつも翔太だった、のに

「おめでとうございます、良かったですね、お嬢様」

『…………そうだね』

翔太はにっこりと笑って結婚を祝福した

『準備してくる』

「それでは、洋服の用意を」

『要らない、私が選ぶから』

「……かしこまりました」

結局、翔太の顔も見れずに部屋に籠ってしまった
私がいなくなったら翔太はどうなるんだろう

そんな事を思うくらいに、翔太の事が大切らしい
静かで広い部屋でただ泣くことしか出来なかった。