け ページ2
今日授業で使った欠けたカッターの刃が僅かに冷たさを伝えてくる
まるで息をしてないような、呼吸が存在しないような冷たさを。
「なぁ俺さ、もしかしてお前の勘に障るようなことした?」
『ううん、ほら、花巻はいつだって優しいでしょ?
だから花巻が私の勘に障るようなことしないことぐらい花巻が一番よく知ってるはずよ』
「……そうだな」
『そうだよ
…ふふ、自分で言っといてなんだけどさ、それ認めちゃうんだ』
「認めちゃ悪ぃかよ
てかその前にこの手、どうにかしてくんね?」
『それは無理なお願いです』
カッターを握っている両手でバツを作り、そして直ぐ様手を定位置に戻す
人の首に刃物を当てているというのに、彼女の声は相も変わらず柔らかい
何でカッターを持ってきてしまったのか。
今日ばかりは忘れ物をしなかった自分を恨んだ。
今日に限って技術に使うカッターナイフを持参してきたこと、
無い人は持ってこなくてもいいと言った技術の教師、
その話を聞き流してしまっていた、記憶に残さなかったこと、
そして片付けるのめんどくせぇからと胸ポケットにカッターをしまった自分、
それら全てをそれはもう酷く恨んだ。
いくら朝の占いが10位という微妙な順位だったとしても、このことはどうにも割り切れない。
あーあ、もってこなけりゃよかった
悶々とそんなこと考えている俺とは正反対なことに冷静さを欠かない彼女のその声は、常に俺の鼓膜を震わせる。
そしてそれに抗うように尖った声を絞り出すのはいつだって俺だ。
奪っているのも吸っているのも同じ空気なのに、どうしてこうも違うのか。
……しかもそれは声だけに限られていない。
「殺すのか、俺を?」
『さぁね、知らない』
「お前も知んねーのかよ
だったらそんな気紛れで俺の生死を決めてほしくねぇな」
『あぁ確かに!
たまには花巻も正論言うんだねぇ』
やっぱり人の首に刃物をあてるやつの思考回路はよくわからない。
あぁ確かに!
って、なぁにが確かにだよ
遠くから、微かに烏の鳴き声が聞こえる。
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ナナシ(プロフ) - ありがとうございます 頑張ります 応援どうもです。 (2017年10月10日 22時) (レス) id: 0bd29f1c62 (このIDを非表示/違反報告)
ゆっけ - いっつも面白いです 更新、頑張ってください! (2017年10月10日 21時) (レス) id: 80316e3efe (このIDを非表示/違反報告)
ナナシ(プロフ) - マジすか、あざます。頑張ります ファイトします。 (2017年10月9日 20時) (レス) id: 0bd29f1c62 (このIDを非表示/違反報告)
みなこ - いつもナナシさんの作品楽しみにしてます!更新ファイトです! (2017年10月9日 20時) (レス) id: 932a4722ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:季節の野菜を添えて。 | 作成日時:2017年10月9日 17時