る ページ4
バスが来るまでまだ時間があったので、夜風にさらされすっかり冷え、錆びたベンチに腰掛けて私たちはなんでもない会話をして待つことにした。
「ねぇAちゃん」
『何?』
「暇だし寒いからさ、なんか話してよ」
『あはは、急な無茶ぶりはよしてよね
……んー、何でもいい?』
「うん、なぁんでも」
『じゃあ、今日の試合のかげや…
「まてまてまて、やっぱストップ」
なんでもって言ったじゃん』
「くそぅ、ここで飛雄の話を持ち出してくるなんて……Aちゃん、なかなかやるね」
『まぁそれほどでも。
……話戻すけどさ、今日の試合影山君の方が一枚上手だったね
もしかして練習不足かなぁ?及川くぅん』
「ぐぁぁっムカツクッ
…でもさぁ練習したいけど、残念ながら俺らもう引退なんだよねぇ」
『…そーだった』
「…あーあ。あっという間だったよね、3年って」
『そーだねぇ…』
そこまで言い切ると二人して黙り込んでしまう。自分が言った言葉に勝手に寂しさを抱こうとは、実に滑稽だ。
私はジャージのポケットに手を突っ込み、テーピングを取り出した。
部活用に買ったテーピング。どうやら救急箱に入れ忘れてたみたい。
…え、大失態じゃないか?
そんなことはさておき、皆に巻いてあげたかったな、何て思ってしまう。ま、怪我しないことが一番なんだけどさ。
…いやその前にきちんと道具管理しろってところからだよね。
これじゃマネージャー失格かな。
思えば、皆試合があると必ず私にテーピングを巻いてくれとせがんできた。御利益があるからとかなんとかいって。
ごめんね、御利益なんてなかったね
はは、ほんとに失格なのかも。
でもそんなテーピングのざらっとした感触には確かな愛着があった。
練習不足だなんて、冗談。
だってそんなはずないじゃんね。
及川は誰よりも努力してたし、努力に勝るものはない、飛雄にだって負けるわけないって言ってたもんね。…うん、覚えてるよ。
ただあのとき全員の100%を足して、ほんのちょーーーっと、ほんとにちょっぴり向こうが上だったの。
でもみんなが努力してなかったわけじゃないよ、向こうも努力してただけだから…
んーと……なんて言えばいいのかな、
…うん、そう。
私は及川たちが一番だと思ってる。
烏野にも、白鳥沢にも、伊達工にも
県外の全国常連校よりも
どのチームよりも私は青葉城西が大好きで、どのチームよりもきっとここは強いの。
それだけ。
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季節の野菜を添えて(プロフ) - てーずさん» いやいや、私なんて全然… コメントありがとうございます、これからも見てくれたら嬉しいです (2018年12月22日 18時) (レス) id: 78bf690c70 (このIDを非表示/違反報告)
てーず - 読んでるうちにすごく胸が苦しくなりました。言葉では言い表せないくらい感動して、気づいたら涙を流していました。こんな素晴らしい作品をありがとうございます。 (2018年12月21日 23時) (レス) id: 48b68baf55 (このIDを非表示/違反報告)
季節の野菜を添えて(プロフ) - カトラリーさん» ありがとうございます、携帯水没しませんでしたか?笑 コメント返すのほんと今更ですいません… 水没してなかったらまたこの作品見てくださいね、コメントありがとうございます (2018年12月20日 0時) (レス) id: 78bf690c70 (このIDを非表示/違反報告)
季節の野菜を添えて(プロフ) - ラムティンさん» そんな私には勿体無いお言葉を… 作成日からかれこれ一年ちょい経ってたんですが、まだ読んでくださる方がいただなんて感激です ありがとうございます、すごく励みになります。 (2018年12月20日 0時) (レス) id: 78bf690c70 (このIDを非表示/違反報告)
ラムティン(プロフ) - 凄く胸が締め付けられて苦しくなりました。後から少しずつ涙が溢れてなんとも言葉にしづらいです。久しぶりにこんなに感動する作品を拝見しました。本当にありがとうございました。 (2018年12月14日 3時) (レス) id: 1aff84d8a5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:季節の野菜を添えて。 | 作成日時:2017年9月12日 23時