ー関西の紅一点の物語Ⅴ ー (ページ16)

今日:1 hit、昨日:4 hit、合計:71,303 hit

◎ 10年前の話ページ16

〈10年前〉

2012年滝沢歌舞伎に出演させて頂くことになって、東京で稽古漬けの日々を送っていた当時中1の私

「またやられた、…… 」

見つめる先はレッスン着

服の裾に分かるか分からないかの微妙な長さで切れ込みが入ってる。

これで何回目かとため息をついた

関西からは、私とシゲ、照史くん、神山くん、濱田くんの5人が出演してて、こういう嫌がらせはほかの4人がおらん時にやられることが多い。

レッスン着なんか安物の服か要らんくなった服やし、
そこは別にいいんやけどちょっとずつ精神にくる。

最初は気にしやんようにしてたけど、何回もやられると誰にやられてるのかも気になるし、周りを疑って疑心暗鬼になってしまう。

休止から復帰したばっかりのぽっと出の私が気に入らんとか、そんなとこかな。

.

数日後

今日は他の4人は仕事の関係で稽古の始まりギリギリに着くらしい。

………… 持ち物、気をつけやな。

？「あの、…… 」

「はい、？」

レッスン室の隅で、一人でストレッチをしてると話したこともないJrの子から声をかけられた。

この子は今、HiHi Jetsの井上瑞稀

確かこれが初会話やと思う。

井上「向こうでスタッフさんが呼んでるらしいです、…… 」

よく見ると手をぎゅって握りしめてて、話しかけるの勇気いったんかな〜とか思いながら

「あ、ありがとう …… 」

と言って井上くんが指さした方向に向かった。

スタッフさんに呼ばれただけやし、荷物を持っていく訳にもいかんくて、とりあえず大きなカバンに全部まとめて端っこに置いておいた。

.

……… おかしい。

スタッフさんはおろか、人気すらあんまりない。

井上くんが指した方向、あってたよな？

「とりあえず、戻ってみるか」

不思議に思いながら、頭のどこかで ” まさか ” が思い浮かぶ

いや、そんなはずないよな？

そんなことを考えているうちにレッスン室に戻る足は早足になっていった。

「 ……………… え、？」

大きめのかばんひとつにまとめていたはずの荷物が散らかって
かばんからもシューズケースからも飛び出たダンスシューズの靴紐が切れている

目を疑う光景が広がっていた。