ー関西の紅一点の物語 IVー (ページ10)

今日:2 hit、昨日:2 hit、合計:149,377 hit

◎ 嘘と本音と建前とページ10

〜

大吾との1往復だけの会話もつかの間、後ろから足音が聞こえてきて振り返れば急いだ様子の康二がいた。

向井「 A！」

「え、康二どうしたん？」

大吾に先に行ってていいよ、と告げて康二に向き直す

向井「あの、さ…… 」

あまりにも言いにくそうにしてるもんやから、なんかあったんかなってこっちも不安になる。

向井「 ⋯⋯A、ちゃんと食べとる？」

眉を下げて私を見つめる康二から出た言葉は予想外のもので、思わず固まる

向井「今日ずっと思っててん、A痩せたなって。

言ったら負担になるかもって思ったんやけど、やっぱ心配やねん」

「 ⋯⋯そっか、ありがとう。心配してくれて」

「私は大丈夫やで。心配せんでも大丈夫」

向井「でも、ほんまに痩せすぎやで。ちゃんと食べてや？」

西畑「 ⋯⋯ごめん、俺からも言わせて」

先に戻ってていいって言ったのに……。

ずっと聞いてたんかな

西畑「あんまり言い過ぎてもかえって負担になるのは分かってんねんけど、… 」

ああ、またや。

またこんな顔をさせてしまった。

2週間前に見たあの時の大吾の表情とピッタリ重なる。

西畑「 ⋯⋯頼って欲しいねん、一人で食べるのが辛いなら一緒に食べるし、料理が面倒臭いなら手伝うやん」

向井「俺もやで。Aたち、東京に来るんやし、一緒におれる時間も増える。いつでも呼んでくれたら行くからさ」

正直言って、食べれへんわけじゃないんやと思う。

ただなんとなく、食べたくない。

前ほど食欲が湧かんくなった。

自分でもわかってる。

不健康な痩せ方してることも、スタッフさんとかに「痩せましたね」って言われる回数が増えたことも。

かといってどうすればいいか、なんて思いつかんまま食事の量はそのまま。

メンバーが気にしてくれてるのも分かってるけど、康二も大吾も、他のメンバーも、みんな忙しくさせて貰ってて、私なんかに時間を割いてほしくないのが本音。

こんなん言うたら全員に怒られるんやろうけど。

二人の表情を見てるのが辛くて、頼る気なんてないのに

「 ⋯⋯⋯⋯ありがとう。じゃー、なんかあったら頼らせてもらおかな」

へらっと笑って、そう返すと、2人の表情が少しだけ明るくなった。

私はひとつ、嘘をついた。

〜