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『かず』
「はい」
しばらく走ると、お嬢が俺に声をかけて来た。
『人気モデルさんになった気分！(笑)ね！』
「お嬢は呑気ですねぇ(笑)」
撮られたことにテンションが上がって、ケラケラと軽快に笑って楽しそうなお嬢。
確かにこういう機会は、普通に生きていたらないから
たまにだったら浮かれるかもな。
『あんなシャッター切られることなんてないから、ついねー。んっふふ』
「でもそれだけ今日の世代交代がこの業界では、大きなことだということでしょうね」
『そもそもいないもんね。こんな若くて、しかも女性の若頭は。超目立つねぇ』
手鏡を見て、口紅が取れていないか確認して、唇を擦り合わせている。
すっげぇ色っぽいなぁ、俺の彼女。
「あとお嬢がとても美しいからでしょう。俺が知る限り、他の組にはお嬢のような存在はいませんから」
『ふふ、ありがとぉ、かず』
あー、着物きついと呟きながら、首を回す。
精神的にも疲れたんだろう。
200人近い大人の前で、ああいう話をするのは並大抵なことじゃないから。
「お疲れ様でした」
『ほんとだよぉ。緊張しすぎたからお腹空いたぁ』
「もうすぐお昼ですからねぇ。今日のお昼ご飯なんでしょうね」
『多分お寿司だよ』
「あー、そうですね」
『かずの茶碗蒸しとか、お弁当もあるよ！』
「いつもすみません。用意してもらって」
『ううん。私も茶碗蒸し好きだから頼んだぁ。一緒に食べよ！』
「はい」
あくびをしつつ、窓の外を眺めている横顔は、さっきの仕草の色っぽさは無くなって、子どもっぽい(笑)
そのギャップがね、俺は大好きなんです。
俺が昔っから知ってるお嬢だから。
「A？」
『ふふ、なぁに？かず』
「めちゃくちゃ似合ってます。着物。いかつくて。次は成人式ですね？着物を着るのは」
『ありがと！成人式、何色にしよっかな。明るい色がいいなぁ。いかついのヤダもん(笑)』
「そうですね(笑)かずは黄色が好きなので、黄色を着て欲しいですー」
黄色が好きっていうか、お嬢が昔、鷲野くんのデートの時に着てた
レモン色のワンピースが、すごく似合ってたから。
今もたまーに着てるけどね。
『じゃあ黄色にしよ！明るくなるような、パキッとしたのが良いね！』
「わぁ、良いですね！似合うと思います！」
『それに黒が入っちゃうと、極道感出ちゃうから(笑)』
「くふふ、はい。本物ですからね」
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作者名：鈴
| 作成日時：2020年12月18日 14時
