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その日の晩御飯の後、若頭に話があると伝えると、時間を作ってくれた。
若「どうしたの。Aのこと？」
『はい……。あの、お嬢に伝えてしまいました。僕の気持ち』
縁側に座って待ってると、その隣に若頭がよいしょって座ってくれる。
手にはビールの缶がふたつ。
若「そう。Aはなんて？」
胡座をかいて、一つを俺に渡してから、ビールを空けて
軽く缶を俺に向けて上げてから、喉を鳴らして飲むから
俺もそれにつられるように、若頭に向けて缶を上げてから、少しだけ飲んだ。
『……多分受け入れてくれたと思います』
若「そっかぁ……。嬉しいような、悲しいような、寂しいような。複雑だねぇ、男親からしたら(笑)」
肘をついて、少し前屈みになると
俺の方を見た若頭の顔は、普通のお父さんの顔になってて
何とも言えない、めちゃくちゃ複雑な笑顔をしている。
「……すみません」
若「いやいやいや。うん。ぜーんぜん。和君で良かったって思ってるよ？思ってるけどさ？分かんないだろうけどぉ、寂しいのよ、やっぱ。僕じゃない男からも特別に愛されるって。すごく良いことなんだけどね？」
「はい」
多分お互い、どう話し出して良いか分からなくて
2人して無言でビールに口をつけた。
2人の空気が、どんどん気まずくなっていく。
ビールを半分くらいまで飲んだら
若「……親御さんには？言うの？」
若頭から話しかけてくれた。
「僕から言うつもりは今の所ないですが、申し訳ないとお嬢は仰ってました」
若「だろうねぇ……。妻もね、同じこと言ってたよ」
「そうですか」
今度はビールの缶に視線を落として、穏やかな声で話し出す。
若「うん。一般家庭ではないからね。僕よりも妻のが僕の両親に頭を何度も下げてくれて。もう2人とも亡くなっちゃったから会えないけど、Aが産まれるまでは、絶縁状態だったんだ。Aが産まれてからは徐々にねぇ」
「そうでしたか……」
なんて答えていいか分からなくて、また無言になってしまった。
若頭が暗い空に僅かに光る星と、雲に半分隠れた月を見上げる。
そしたら今度は、俺を真剣な顔で覗き込んで、低い声で言った。
若「和君……？指を詰めるか、刺青彫るか……どっちにする？」
若頭の目が本気すぎて、心臓が急に早鐘を打った。
やっぱどっちかは必須なのか……？！
どっちも嫌だけど、そんなこと言えるはずないから
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作者名：鈴
| 作成日時：2020年12月18日 14時
