お嬢といっしょ2 【ars/K.N】 (ページ25)

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『かずの怪我はどう？もう痛くない？』

「たまに疼くくらいで、なんとも」

『良かったぁ』

「そうだ、考えてくれましたか？どこに行きたいか」

『あぁ……今何が流行ってるか分かんないから、かずの行きたいところ。どこでもいいよ。思いつかないから』

この部屋にはテレビもないからね。

外の世界を、もうここ1ヶ月以上、お嬢は知らない。

……大野が逮捕されたことも。

「分かりました。……パン、食べますか？」

『ん。次はね、クリームがいっぱいのとこ』

「ふふ、はい」

お嬢は言わないけど、気付いてる。

自分が得体の知らないものに体内を侵されたことを。

けど、それを口にしないのはきっと、怖いから。

口にしたらパニックになるのが分かるから、俺らからは絶対に言わない。

あえて口にすることも、克服の道なのかもしれないけど

それは俺らがする役目ではない気もするし

自分の意思に反して、泣いたり、喚いたり、パニックになるお嬢より

なるべく1分でも長く、薬のことを忘れて笑ってるお嬢が見たいから。

お嬢の口のそばにクリームをたくさんつけたパンを持っていってやると

またゆっくりとさっきより大きく赤い唇を開けて、綺麗な歯が見えた。

俺の指を甘噛みするように食べる仕草と感触は、目眩がするほど色っぽく

指先は一瞬で熱を持ち、心臓が勢いよく跳ねた。

『あーん……あぁ、かずの指の方がクリームついてるし』

自分の唇の端についたクリームを舐めながら、残念そうに言うのがまた、艶っぽい。

「ふふ、食べるの下手ですねぇ、お嬢は」

指に残っていたクリームを、今度は俺がお嬢の目を真っ直ぐに見つめながら舐めた。

勝手に舐め合った指が、熱い……。

勝手に色々考えて昂奮して、オトコの部分を露わにしそうになった俺は、最低だ。

はぁ……何やってんだ、俺は。

こんなことして、変な欲を満たすな。

『あぁ、舐められた。ねぇ、中のカスタードだけ食べたい。かずが私のクリーム横取りするもん』

「横取りではないですけど(笑)スプーンもらってきましょうか」

『ん、ありがとぉ』

その結果……

『あとあげる』

「クリーム、全部ないです……(笑)」

『ん？ふっふふ。ただのパン』

「もぉ……仕方ないですね。いただきます」

『おいし？』

「美味しくはないです」

『んふふふ、ごめんね？』

「はい……(笑)」

俺がパンを食べ切るのを楽しそうに見てくる。