74 ページ24
組「いいか。絶対にAが戻ってきても安心できる組でなければならない。大野のように成り下がるな。そして薬を吸わされたことは、Aが自分で気付くまで、決して言うな。もちろん口外は以ての外だ。いいな！」
＊「はい！」
それからしばらく、みんなお嬢が恋しいから、2、3人ずつ順番にお見舞いに通って
今日は気分良さそうだとか、寝たきりだったとか、パニックになってしまったとか、幹部全員で情報交換をした。
「お嬢。失礼します。かずです。お久しぶりです」
『んー……』
今日は気分が良くないのか、寝たまま俺の方を見る。
俺がお見舞いに行く時は、1人が多い。
何故ならみんなこんな状況になって、仕事が増えたからだ。
お嬢の世話だけをしてる俺は、手持ち無沙汰だし。
久しぶりと言いつつも、1週間も経ってないけど。
「気分はどうですか？」
『かず……』
「はい」
『クリームパン、食べたい……。部屋から出たい……』
「看護師さんに聞いてみましょうか、売店まで行って良いか」
『ダメだって。さっき聞いた……。パンは食べても良いか聞くの忘れた』
「じゃあ聞いてきますから、ちょっと待っててください」
『かず』
「はい？」
『すぐ戻ってきて……？』
「はい、すぐに」
看護師さんに聞きに行って、少しだけなら食べてもいいって許可が出たから
売店に買いに行って、急いでお嬢の部屋に戻る。
お嬢は上半身だけ、ベッドごと起こして待っていた。
「お待たせしました、はい、クリームパン！」
『かずぅ』
「はい？」
『あーんして』
「はい、分かりました。今日のお嬢は甘えん坊ですねぇ」
『ん……』
弱々しく微笑んだお嬢の隣に腰掛けて、小さくちぎって食べさせてあげる。
「はい、あーん」
力無く開けられた唇の隙間から、少し押し込むように入れてあげると、歯が当たった。
ちょっと大きかったかな……。
俺が入れてあげたパンをゆっくり味わうように咀嚼していく。
『あぁ……ん、あまぃ〜』
「甘くて美味しいでしょ？」
『ん、おいしい。かずも食べてね』
「はい、いただきます」
『かず、メロンパンが好きなのに、ごめんね』
「いえ。お嬢と食べられるなら何でも。それにクリームパン食べる約束しましたし」
『ふふ、ありがとぉ』
ぼんやりと俺を見つめる目は、こっちにきたばっかりの時よりは
だいぶ焦点が合うようになったし、覇気も出てきたように思う。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 463人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：鈴
| 作成日時：2020年12月18日 14時
