お嬢といっしょ2 【ars/K.N】 (ページ22)

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ついに流れた涙は、堰が切れたのか、全然止まらないから

身体をお嬢のベッドに預け、顔を近づけながら

その涙を何度も指の背で拭ってあげて

それでも泣き続けるから、頭も頬も宝ものみたいに優しく撫でた。

「申し訳ありませんが、それだけはお嬢の命令でも聞けません。俺の両親が泣こうと、何と言おうと絶対に辞めません」

『まだ……抜け出せるよ？かずなら』

震える声でそう言うお嬢。

なるべく優しく微笑みかけながら、言葉が強くならないように話す。

「じゃあお嬢も一緒にかずと抜けましょ。俺もお嬢が怪我したり、苦しそうにする顔はもう見たくありません」

『それは無理だよ……』

「だったら。かずも当然無理です」

『言うこと聞いてよ』

「それだけは聞けません」

『何でっ……！』

下唇をキツく噛んで、これ以上泣いてしまうのを堪えている。

泣いた顔も可愛くて仕方ないお嬢を残して、出ていけるわけないだろうが。

寝たままのお嬢をこれでもかと、怪我をしていない方の腕で優しく抱きしめて

お嬢にしか聞こえないように、そっと大切に言葉を紡ぐ。

「前にも言いましたよ？かずは……俺は……お嬢が大好きだからです。お嬢がご病気でも、例えどんな罪で犯罪者になっても。一番、世界で一番……自分の命よりずっと大切です」

俺の背中にもお嬢の手が回ってきて、病衣を強く握ってるのが伝わる。

『仕事なのに……どうしてそこまで思えるのかわからないっ……』

仕事、ねぇ……。

仕事以上の感情を抱いてしまってる時点で、もう仕事じゃねぇの分かってるけど

お嬢にそれが伝わるわけないか……。

「A組の次期若頭、AAを尊敬し、今、目の前にいるAAという女性を心から慕い、何よりも愛おしく思うからです。だから俺に見せてください。お嬢が組長になって、てっぺんを取ったところ。何百人もの上に立って、指揮を執るところを。あと……すっげぇ寂しいですけど、ウェディングドレスを着るところも。少なくともそれを見るまでは、絶対に離れません」

今度は俺の首に腕をぎゅっと巻きつけ、耳元でため息交じりに言った。

『……かずは馬鹿だねぇ、ほんとに』

耳に触れる息の感触に、ドキッとして、瞼をキツく瞑って

こっそりとお嬢にバレないよう、髪に小さな小さなキスをした。