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可愛い彼女は“鍋をする”ということについて、特に深く聞いてこないけど
“食べない?”じゃなくて“しよう”ってことは、どちらかの家でするわけで……。
だとしたら色々考慮して、Aちゃんちのがいいのか?
俺の家だと余計緊張しちゃうかも知んないし……
『潤?どうしたの?ぼーっとしてる』
「え?あぁ、いや?鍋、どっちの家のがいいのかなぁって……」
『あぁそっか。私はどっちでも』
ふわりと微笑みながら言うAちゃん。
「Aちゃんちにしよっか。調味料とかある?で、野菜はこの余ったのを切って持っていけばすぐ出来るよ。肉は帰りに買お」
『全部揃ってます!そうしましょー!楽しみー!』
無邪気にウキウキするAちゃんに対して
ほとんど汚い下心で誘ってる俺は最低かもしれない。
Aちゃんが片付けてくれている中
こんな事じゃ邪心を払いきれないと分かっていても、鍋の材料を無心で用意する。
『潤?』
「え?なに?」
『顔、怖いよ?無理しないで?デートはいつでも出来るし。疲れてるでしょ?』
カウンターから、俺の顔を心配そうに覗き込んでくる。
「え?!あぁ、疲れてないよ。大丈夫!鍋をさ!何鍋しようかと思って。食べたいのある?」
『んー、シンプルに寄せ鍋!』
「了解。流し片付けたら行こうか。コート着ておいで?外すごく寒いよ」
『はぁい!』
咄嗟にそう言って誤魔化せたけどさ。
……頼むよ、俺の理性。
もし……もし、そういうことになれたら
宝物みたいに、愛おしく、大切にしたいから。
材料を積んで、俺の車で都内のイルミネーションを見に行く。
『おっきいクリスマスツリー楽しみ!』
「俺も。仕事帰りに車から見るのとはまた違うからねぇ」
『ねぇ』
車内の音楽に合わせて鼻歌を歌ってご機嫌な彼女。
窓に映る顔はすごく可愛らしい笑顔だから
可愛くない瞬間なんて、Aちゃんにあるのかな。
会場近くの車を止めて、手を繋いで行く。
「寒くない?」
『寒いけど、大丈夫!』
「ダメダメ。女の子は冷やしちゃダメなの。はい、マフラー巻き直して、コートのボタンもっとしっかり止めて。手はポケットに入れる。ね?」
絶対風邪引かせたくないからね。
風邪でだるくなるの可哀想だもん。
『ポケットあったかいー!』
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作者名:鈴 | 作成日時:2020年12月16日 14時