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場所はAちゃんが行きたいと言ったとこにした。
『潤は行ったことある?』
「むかーし家族で来たくらいかなー」
『そっかぁ』
「だから楽しみ!水族館自体久しぶりだし」
『ふふ、良かったぁ』
のんびり歩きながら、水族館前にちょっとカフェで休憩。
他のカフェの視察がてらね。
俺はコーヒー、Aちゃんは紅茶を頼んで、店の隅の小さな丸いテーブルに座った。
「うまいなぁ、コーヒー」
『良かった。紅茶もおいしいー』
手が冷たくなっていたのか、カップを両手でしっかり持って
一生懸命にふーふーしながら飲んでいる。
ちらほら振袖を着てる子が見えて、もうすぐ成人式だから前撮りでもしたのかなぁと思った。
「ねぇ、来年さ?Aちゃんも成人式だね」
『あぁ、もうそんな時期かぁ』
Aちゃんも窓の外を見て、ぼんやり言う。
「成人式、行く?」
『んー。どうかな。行かないかな』
「えぇ?何で?」
『別に会いたい人もいないし……。よく会う友達なら成人式行かなくても会ってるから、あんまり興味ないです』
カップの中身を節目がちに見て、少し悲しそうに話す。
「せっかくの晴れ姿なのに?」
『着物着ても誰に見せたらいいのか分かんないもん。それに式が終わった後、飲み会みたいなことするんでしょ?……誕生日遅くて、みんなと一緒にお酒飲めないから興味ない』
あぁ、そっか……。
両親もいないし、おじいちゃんも施設で、伯父さんたちも近くにいないから
余計にそう思ってしまうのかと、すぐに解釈した。
「俺は見たいなぁ。Aちゃんの着物。それに伯父さんたちも見たいと思うけど」
余計なお世話だと思ったけど、そう言うと
『ふふ、じゃあ着ようかな、潤だけのために』
ふわふわの笑顔でそう返してくれたから良かった。
家庭環境的に気分を害してしまったかなと思ったから。
俺も微笑み返して、コーヒーを飲む穏やかな瞬間。
「どんなの着るの?」
『んー。お楽しみってことで。潤は?成人式行った?』
「行ったし、飲み会もしたし、煙草も吸った」
『わぁ、盛りだくさんだぁ(笑)』
若気の至りだよね、完全に。
友達と調子乗って、馬鹿騒ぎしたなー。
あれはあれでちょー楽しかったけど。
「お酒は今も飲むけど、煙草はそれ以来吸ってないなぁ」
『お酒かぁ。美味しい?』
腕を机について、少し前のめり、首を傾げて聞いてくる。
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作者名:鈴 | 作成日時:2020年12月16日 14時