アネモネの花束【ars/J.M】 (ページ6)

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運ばれてきたビールを持って、お疲れ様を言いながら乾杯すると、すぐに

『ていうか、さっきからちょっとニヤニヤしてるー！人が振られた話を聞いて楽しいんですか！？趣味悪ー！ちょっと顔がいいからって！』

怒りつつも、ビールを美味そうに喉を鳴らして飲んだ。

Aの細い腕に大きなジョッキが、相変わらず似合わない。

「わーかった、わかったから！な？ニヤニヤしてないから。落ち着け。俺に怒るな」

俺にマジの八つ当たりするほど、ショックだったみたいだ。

こんなAは見たことがない。

落ち込んだり、泣く理由と言えば、少し前は俺や他の人に叱られたり

俺からしたらそんなことないけど

A的に、作家さんとうまくコミュニケーションが取れなかったと、自己嫌悪に陥ったところはよく見るが……。

「あのさ？差し支えなければで構わないんだけど、何で別れたの？」

効果音をつけたくなるような怒り方をしてるAに、恐る恐る聞いてみる。

『……ありきたりですよ？私より若い子と二股してただけです』

「あぁ……よく聞くけど、よくないパターンだな？」

『はい。ちょっと前から怪しいなとは思ってて。問い詰めたらあっさり認めて乗り換えてたんです。Aは1人で生きていけるでしょ、強いから。強すぎて可愛くないって』

「おぉ。まぁまぁなこと言われたな？」

『結構前に仕事と俺どっちが大切なの？って聞かれて……。仕事じゃないですか、そりゃ。彼氏いなくても生きていけるけど、お金ないと生きていけないんで。そもそもそこを比べる時点でナンセンスというか。それがダメだったみたいで』

「女みてぇな男だな？」

『ねー。もしかしたら結婚するかなーって思ってただけに、ダメージが大きすぎて。そういう話は少し出てたので……。すみません。全然今日の仕事、真面目にやってませんでした』

頭を下げて、俺に謝ってくる。

こいつのいいところは、こうやってどんな時もちゃんと素直に謝れるところだと思う。

開き直って、ふてくされてるだけの奴が多いから。

「いや。仕事は大丈夫。体調悪いのかと思って、ちょっと心配した」

『心配してくれてたんですか？』

「そりゃ、可愛い後輩が仕事以外で元気なかったら心配するだろ、普通」

『えー。先輩ちょー優しー♡』