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「たまたまだよ。Aの友達が俺と同じマンションだったんだって。だからそこのコンビニから一緒に帰ってきただけ」
和「じゃあその袋の持ち方は？」
「重そうだったから俺が半分持ってあげただけ。な、A？」
『……はい』
和「ふーん」
「にのこそどうしたの。こんなとこで」
話を逸らして、Aを俺の半歩後ろにさりげなく隠した。
Aがにのの目が苦手だって言ってたのを思い出したから。
和「仕事。そこの店で打ち合わせしてた」
「そう。お疲れ。んじゃあ行くわ」
『お疲れ様です……』
袋を強く引っ張って、Aに合図を送って歩き出したそうとしたのに
和「Aちゃん？」
『はい』
和「好きだよ」
Aが呼び止められて、一瞬3人に変な間があって
それがすごく嫌な予感がしたから、動物的本能で振り向かなかったら
躊躇なくAに好きを零したにの。
ストレートな言葉に秋の夜風と緊張で、一気に背中が冷たくなっていく。
Aがにのに靡かないのを分かっていても、どう答えるのか少し怖いから。
『え？』
和「仕事熱心で、愛嬌があって、誰にでもフラットで、頑張り屋さんで。一生懸命に仕事してるAちゃんが大好き。美味しそうにご飯食べてるのも、冗談言ってくるのも、笑顔も、全部」
真っ直ぐにAを見つめるにのの目が、男から見てもどきっとするほど真剣で
遊びで声をかけてるんじゃないかって、何処かで疑ってた部分があったからびっくりした。
何も言わないAに、優しすぎる声でにのが言う。
和「俺と付き合お……？」
『……あ、えっと……』
はっきりとした言葉は言わないものの、にのの気持ちを受け取るつもりはない態度を取るA。
和「……俺のこと嫌い？」
不安そうに聞くにのに、言葉を選んでAが断りを入れる。
『二宮さんの事は……上司としては尊敬してます。けど、1人の男性としては見れません。この先も』
和「どうして？」
俺なんか見えてないみたいにAに近づいて、怖いくらい優しく問いただし
僅かに上がる口角と、瞬き少なめの茶色の瞳が鋭くAをしっかり捕らえている。
『どうして……。んー、本能的に……』
そう言いながら、背中で俺の服の裾を握っている感覚がした。
和「そ……分かった。ごめんね、なんか。潤くんも。お疲れ」
「ん……お疲れ」
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作者名：鈴
| 作成日時：2020年5月31日 13時
