アネモネの花束【ars/J.M】 (ページ44)

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『あ！ポテトチップスも買う！』
「は？のりしお？うすしおだろ」
『はぁ～？ありえん！のり！のり一択！』
「邪道だなぁ」
『確かにおじさんは変化を嫌いますからね』
「若者は古き良きものを排除する傾向にあるな」
『あっはっは！うっざ！』

そんなたわいもない、けどめちゃくちゃ楽しい会話をする。

まるで長く付き合った恋人同士みたいな自然な感じで。

ビールもまぁまぁ入って重たくなったコンビニの袋を持ってやって、部屋に向かう。

「こっち歩きなさい。車が来るから」

Aは至って普通に歩いてるんだけど

男の俺からしたらタイトスカートとヒールが歩きにくそうに見えて仕方ない。

歩幅もいつもより狭い気がするし、車道側は余計に危なっかしい感じもした。

『あぁ、ありがとうございます』

「その格好、歩きにくそうだな」

『んー？でもスリット入ってるからそうでもないです』

ほらってスカートの裾を見せるために、俺の少し前に駆け出す。

今更見せてくれなくても知ってるよ。

歩くたびに内腿がチラッと見えて色っぽいなーって朝から思ってたから。

そんな格好で朝一で外勤行って、男の新人の作家さんとカフェとは言え

2人きりで打ち合わせしてたんだろ？

お前は足を組む癖があるから、もしかしたら、そいつも見てたんじゃないかな。

むかつくけど、男ってそういうとこ、好きとか嫌いとか関係なしに無意識で見ちゃうから。

俺はAが好きだから、意識的に見るし

無意識のうちに目で姿を追ってるけど。

「それでも歩きにくそー」

『履きます？』

「履かねぇわ(笑)」

『似合いそうなのに？』

わざと片足を軽く真っ直ぐ伸ばして上げて、スカートを見せつけるようにしてくる。

「生憎そっちの趣味はないんで」

『これから目覚めたとしても内緒にしときますね？(笑)』

「……ありがと(笑)」

ふふふとご機嫌に笑って、俺の隣を後ろで腕を組んで、楽しそうに歩く。

突然空を指差して

『ちーっさい星！見えるから明日晴れだぁ！ね？』

……なんか良いよね、こういうとこ。

一人の女として意識し始めてからは

あれもこれもと、見慣れていたはずのAの行動が好きと気付いて心が忙しい。

「洗濯日和だな」

『掃除もしたいなぁ。あ、やっぱ袋、半分持ちます！』

「え？いい……あ、ありがと」

『半分こ！』