アネモネの花束【ars/J.M】 (ページ4)

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「そんなに食ってんのに、何でそんな細いの？ジム行ってんの？」

『行ってます！いっぱい食べたいもん！しかも、今、女優さんと同じトレーナーさんについて貰ってるんですよぉ！なので、わたしも実質、その女優さんってことになりますね！』

「その女優に今すぐ謝れ(笑)」

『んっふふ。松本さんはジム行ってますか？』

「一応。もう気をつけないと太る年齢だからなぁ」

『おじさんですもんね』

「まだお兄さんだよ！」

『奢ってもらうお昼ごはんは最高ですね！松本先輩、御馳走様です！』

俺に小突かれそうになったのを、素早く避けて、わざとらしく感謝してくる。

「調子乗んなよ(笑)」

『ふふ』

数日後、いつも通り仕事をこなしていく。

資料に目を通したり、電話したり、違う部署に資料を届けに行ったり。

けど、ここ最近では珍しく、Aが元気がない。

いや、仕事はいつも通りやってくれてるし、ミスがあるわけでもない。

なのに、なんか違う。

ため息ばかりついて、時折りぼーっとしていて。

心配だから、晩飯にでも誘ってやろうかな……。

「おい。仕事区切りつけられそうなら、晩飯付き合え」

自分の仕事が終わって、まだ仕事してるAの後ろから

わざと肩をポンと叩いて、軽い感じで誘ってみる。

『あぁ、はい。行きます』

ほら、変。

いつもなら

あー！触ったー！セクハラで訴えますよ！(笑)
でも、晩ご飯でチャラにしてあげます！何奢ってもらおうかなー。せっかくなら高いの食べたい！！

なんて感じのことを、調子に乗って言ってくるのに。

「え？あー……何食う？何でも好きなの言えよ？」

拍子抜けして、ちょっと吃ってしまった。

『あぁ……んー。松本さんは食べたいのないんですか？』

「俺？んー、たまにはラーメンかなー」

『じゃあラーメンで良いです』

おい、マジでどうした？

変なもん食ったんじゃね？

「Aどうした？何かあったのか？お前、今日一日中変だぞ」

『松本さんには関係ありません。プライベートなことなんで』

デスクの上を片付けて、鞄を抱えて、俺を面倒臭そうに一瞬見上げてきた。

「なんだ。彼氏にでも振られたか(笑)」

そう言いながら部屋を出て、エレベーターホールに向かう。