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いつもよりのんびり歩いて、蕎麦屋についた。
向かい合って、いつも食べてるメニューを頼む。
『暑いから冷たいお蕎麦美味しいですよねー』
そう言いながら、俺の前で薄手のジャケットを脱いで、椅子の背もたれにかけた。
けど、半袖から見慣れた白くて細い腕に違和感。
「おい」
『はい？』
「お前それどうした」
『え？』
「左腕！痣出来てるぞ」
思わずその腕に手を伸ばし、痣が見やすいように袖を少し捲る。
それにびっくりしたのか、俺に掴まれた腕を強引に自分の方に引いて、痣を隠す仕草をしたA。
俯いて何も言わずにそこを何度も撫でている。
『えーっと……転けたときにここも打った……かも？』
「そんなわけねぇだろ！俺見てたんだから。男にやられたんじゃねぇの？」
下唇をキュッと噛んで、言いたくなさそう。
でも見てしまったからには、俺は無視できない。
「あいつだろ？やったの」
俺が優しく聞いても口を摘んだまま。
なんならちょっと不機嫌。
そしたら蕎麦が運ばれてきて、割り箸を割りながら小さな声で話し出す。
『口論になって……お互いヒートアップしちゃって、そしたら向こうに結構強めに両肩押されて。よろけたから危ないと思って咄嗟に膝を庇ったら、自分で机にぶつかったんです。だから自分のせいです』
「でもあいつが押さなかったら、出来なかった痣だろ」
『まぁ。でも大丈夫です。それで痛すぎてめっっっっちゃむかついたんで、あいつの残ってた荷物を玄関から通路に放り投げて、ついでにあいつも蹴り倒して、追い出したんで』
お腹空いたーって、目の前の冷たい山菜蕎麦を美味そうに啜る。
あいつが肩を押したのは力の差的にも、絶対にいけないことだけど
Aの仕返しが思った以上でびびった……(笑)
「お前、すげーな……？」
『なのでお互い様ですね。でもあいつに時間割くの、あれ以上無駄だと思ったんで。やりすぎた感は否めませんが』
「良いんじゃねぇの？二股してたんだし」
『そうですね！あー、お蕎麦美味しい。ここのお蕎麦屋さんが一番好きー。生き返る！』
「何食っても美味いよな」
『はい！松本さん、グルメサイトより信頼ありますからね(笑)聞けば絶対間違いないもん』
すっかりご機嫌なA。
相当腹が減ってたらしい。
やっぱりいつ見ても美味そうに食う。
「てか、何で勿体ぶって言わねぇんだよ。超心配しただろ」
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作者名：鈴
| 作成日時：2020年5月31日 13時
