お嬢といっしょ【ars/K.N】 (ページ42)

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「そんなことないですよ。また素敵な恋が出来ます」

気休めにしかならないだろうけど、少し明るい声で言った俺に

『そうだと良いねぇ……』

何もかもを諦めたかのようなため息混じりの声で、お嬢は呟く。

お嬢の甘酸っぱくて、初々しい、初めての恋が静かに終わりを告げた。

自由な恋愛はできないかも知れないけど

お嬢のことを考えて、大切にしてくれる人が出来たらいいなと

お嬢の泣き顔を見て、そう願わずにはいられなかった。

そしてお嬢はこの夏、全ての刺青を入れ終わった。

以前言っていた通り、内腿に青い蝶々、Vラインには百合の花を彫った。

内腿は直接見せてもらったけど、さすがにVラインは見れなかったから断った。

……でも写真では見せてもらって。

こんな言い方が合ってるかわからないけど

敢えてほぼ筋彫りだけにした百合の花は

お嬢の白い肌によく映えて、めちゃくちゃ綺麗でびっくりした。

そして、そんなお嬢も18歳になる思春期、反抗期のお年頃真っ只中だ。

『水着着たいなー。プールか海行きたいなー』

「ダメです」

暑い暑い夏。

いつも通り縁側に座布団を枕代わりにして、適当に寝転んでるお嬢

その頭側に俺は腰を下ろして、お嬢の見張り番。

女の子というより、女性の方が近くなって来たお嬢。

ノースリーブ、ショートパンツから見える、スッと伸びた長い手足

陶器のように滑らかな白い肌

それから可愛らしいピンクの唇

綺麗な二重と緩やかな曲線を描くまつげ

サラサラの髪

小さくはない柔らかそうな胸の膨らみ

組員が口を揃えるように言っていた、みんなが思っていた通り

思わず街中で見かけたら、振り返りたくなるような女性になった。

そのおかげで告白されることもあるらしいけど

全て断っているから、彼氏はあの先輩以来、出来たことがない。

この家の娘だから、あの時から作らないと

お嬢の中で強く決めてしまったのも、出来ていない理由だろう。

まぁその方が俺からしたら安心だけど。

『刺青あるから？』

「まぁ、それもそうですけど。肌を露出しすぎるので、そもそも水着がダメです」

『ええ？日焼け予防で服着て入ればいいじゃん』

「それでもダメです。絶対に許しません。着たかったら、かずが死んでから思う存分着てください」

『はぁ？かず死なないから無理じゃん』

俺の太腿をパン！と良い音をさせながら置いて、ちょっと睨んで言ってくる。

痛いなぁ。