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ドアが開く位置にお嬢が並ぶ。
その数人後ろに俺も並ぶと、丁度電車が来てドアが開く。
お嬢にバレないように車両の端の方に座って様子を窺うことにした。
うまく隠れられるくらいの人の多さに感謝だぜ。
お嬢も椅子に座って、スマホチェック。
メールによると、どこか目的があるような感じじゃなかったけど
そんなにじっくり遡って見る時間なかったしなぁ。
直近のメールには行き先の記載はなかったはず。
あったら絶対覚えてるもん。
まぁ、消したってことも無きにしも非ずだが。
今更あれこれ考えても仕方ないんだけどねぇ。
「あっ……」
どこの車両かを聞いていたのか、手を振りながら、迷わずお嬢の隣に座った青年。
ちなみに青年の名前は鷲野くんと言う。
鷲野くんは、いつ見てもとても背が高い。
小柄なお嬢の隣だと余計。
部活はバスケで、高校2年だと聞いている。
鷲野くんの最低限の情報は、その他にも怪しまれない程度にお嬢から得ているが……
「さっきから近ぇんだよな……鷲野ぉ」
今のところ可愛らしい交際っぽいが
近い、近い、近いぃぃぃ！！
近すぎだろ！！
一つのスマホを覗き込むなっ！！
あっ！だから顔近すぎ！！
あ"ーーーもぉーーー！！
2人の距離感と目眩がしそうな甘酸っぱさにイライラしてると
目的の駅についたらしく立ち上がるからついて行く。
この駅だと……ウィンドウショッピングでもする気か？
って、いつの間にか手ぇ繋いでるじゃねぇか！
階段危ないよとか言って？
わぁぁぁぁ……！
鷲野の腕を今すぐ折って繋げなくしてやろうか。
お前の二本の腕くらい、今の俺なら秒で折るのは可能だからな。
尾行については細心の注意を払うが
もうイライラは抑えようとも思わない俺。
なんならそのデート、ぶち壊してやろうかとさえ思い始めた。
「ちっ……映画か」
どこのシートにしたか分からないし
暗闇になってから入らないとバレる可能性大だろうが。
「あー、うっぜ」
出来る限りお嬢たちに近づいて、どこのシートに座るのか
何の映画を観るのかを確認する。
流行りの恋愛映画っ！！
ベタすぎてつまんねー男だな、鷲野。
ていうかこの映画、アラサー男子が1人で観るには痛すぎるが、致し方ない。
半券を千切ってくれた青年にめちゃくちゃ見られた。
こいつ1人で観るのかよみたいな目で。
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作者名：鈴
| 作成日時：2020年5月31日 10時
