10 ページ24
医師「検査薬で見て、妊娠してるかもってことだね？とりあえず内診室で診てみようか。もしかしたら心拍見えるかも知れないよ」
『怖い……！』
医師「大丈夫。旦那さんにもついてきてもらお」
「だって。一緒だから大丈夫」
『ん……』
優しい先生と看護師さんに促されて内診台に座ると、仰向けになって足が開いた状態になる。
呼吸が荒くなって、今にも泣き出しそうなAちゃんの肩をさする。
「大丈夫だよ。いるからね」
『かずさん、かずさん……！』
「大丈夫、大丈夫」
怖いのと不安なのとで、顔を覆ってエコー画面が見られないAちゃん。
医師「診るねぇ。お、分かる？矢印のところ。赤ちゃんの心臓、良く動いてるねぇ。赤ちゃん、ちゃんといるね」
「見える？」
『見える……これ、赤ちゃん？』
そっと手を顔から外して、恐る恐る見つめた、白黒の画面。
医「そうだよー。一生懸命生きてるね。じゃあ椅子戻すね。そしたらもう一回診察室に来てね」
『かずさん……』
「ん？」
『いた』
「いたね！良かった」
『うん……』
その後診察室で色々聞いて、帰りに母子手帳をもらいに行ったけど
Aちゃんはずっと黙ったまま。
きっと自分の中で今の気持ちや感情を整理しているからだ。
帰ってくると、ソファー膝を抱えて、その膝に顎を乗せて座って
もらったエコーの写真をじっと見つめている。
「Aちゃん。大丈夫？」
Aちゃんの隣に座って、背中を優しく何度も撫でて
そのまま肩を抱いて、エコー写真を覗き込むように一緒に見た。
『かずさん』
「んー？」
『こんなに小さいのに、生きてるのすごいね』
「そうだねぇ」
『大きく、なってくれるかな……』
「なるよ」
『私も……お母さんになれるかな』
親からの愛情を知らなさすぎるから
そう言う横顔が、やっぱり不安と恐怖に押しつぶされてしまいそうだった。
「なれるよ」
『なっても良いの……？』
「もちろん。だから赤ちゃん、きてくれたんだと思うよ。せっかく来てくれたんだからさ、2人で大事に大事にしてあげよ？」
強く肩を抱いて、髪にキスをして。
頬を優しく何度も撫でる。
少しでも不安と恐怖を取り除いてあげたい。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 300人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：鈴
| 作成日時：2020年5月31日 9時
