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「分かったよ」
俺の要望も聞いてくれるらしい。
俺の嫁優しい！
Aちゃんは傷を気にしているけど、俺は消せるなら寧ろ見せれば良いと思っていて……
「これ、嫌だ？」
『背中見えちゃう』
「消せるよ？」
＊「消せます」
店員さんも笑顔で俺の援護。
『……じゃあ良い』
「ありがとう。綺麗に撮ってもらおうね」
入店して、一時中断も含め2時間。
やっと着替えて、メイクしてもらって、撮影です。
控室は別だから、紺色のタキシードを着てスタジオで待ってたら
ドアがゆっくり開くから立ち上がると、Aちゃんが入ってきた。
「わぁ……」
思わず感嘆の声を上げた俺に、恥ずかしそうに視線をくれて、隣に立った。
俺が選んだ、はちみつ色のドレスを着てくれている。
『背中、汚いから見ないでください……』
「ううん、綺麗。すっげー綺麗。世界で一番綺麗……」
『え、嘘でしょ？泣くの？』
「かわいい……。俺の嫁がすっげーかわいい」
自分でも泣くと思わなかった。
歳のせいか、ちょっとしたことで涙が出るから困る。
泣き顔を隠すために、Aちゃんを抱きしめて、何度もありがとうと可愛いを伝えた。
＊「本当に。よくお似合いで、可愛らしいですよ」
『……ありがと、ございます……』
Aちゃんの手も俺の背中に回してくれるから
それもまた嬉しくなって、もうそれだけで充分だった。
そのあとちゃんとドレスと着物の写真を撮ってもらって
指を絡めて繋いで、店を出た。
「ありがとね？疲れてない？」
『疲れた。けど、楽しかった』
「良かった」
『ごめんね？』
「俺も。ごめん」
『これから内緒はやめてね？』
俺を一瞬見上げて、手をキュッと握って言ってくる。
可愛い。
「うん。てかさ。着物、着たかったなら最初から言ってよ」
『うん』
「着物、好きだったっけ？」
『違う。成人式、行かなかったから。振袖着たかったんだけど、お金なくて……。友達も少なかったし。だから着たかった』
「そっか。そういえば、成人式の話し聞いたことなったなー」
『聞かれなかったもん』
「まだ知らないことたくさんあるなー、Aちゃんのこと」
『内緒のがそそるでしょ？』
「ふふ、内緒も知りたいよ、教えてよ」
『かずさんが死ぬまでに全部教えるね』
「頼みますよ？(笑)」
『うん、ありがとね？』
「ふふ、こちらこそ。ご飯食べて帰ろ？」
『うん！』
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作者名：鈴
| 作成日時：2020年5月31日 9時
