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『あのね、かずくんと出会えて良かった。大人になってあの日、あの時間に、あのお店に行ってなかったら、こんなに幸せで楽しい時間過ごせなかったもん。かずくんはたくさん我慢させたって言ったけど私ね、我慢なんて1回もしてないよ？苦労だってしてない。秘密にしなくちゃいけなかったことたくさんあったけど、本当に楽しかった。かずくんの後ろからちょっと猫背な背中を見ながら歩くのも、バックミラーから見るかずくんの顔も、雨の日は傘で隠れるからって並んで歩いた日も、全部全部かずくんとだったから楽しかった』
「ん……」
『私こそありがとう。かずくんのお嫁さんになれるのすっごい嬉しい。夢みたい』
「叶ったね？」
『ん？』
「いつか、かずにぃがAだけのかずにぃになりますように……？」
『ふふ、叶ったね！叶えてくれてありがとう、かずにぃ？』
少しだけ右に顔を傾けて、俺の唇にわざとリップ音をさせてキスを一つしてくれた。
『お礼のキス……1個じゃ全然足りないね？』
濡れたまつげを伏せて、ほんとに幸せそうに嬉しそうに笑うから
俺もそれが嬉しくて、心から本当に良かったって思った。
そしたらこの日を迎えるまでに色んな想いとか、葛藤があったから、それが俺の頭の中も心もいっぱいになった。
しかもさっきまで家出されてたから、今、一緒にいられてることとか
くだらない言い合いとかね。
だから自分でも言われるまで気づかなかった。
『かずくん泣いてる……どうして？』
それでやっと俺の涙が一筋頬を伝うのがわかった。
「なんか、いろいろ考えちゃって……今までのこと」
Aの手が俺の髪を優しく撫でて、その手で涙をそっとぬぐってくれる。
『これからはかずくんが泣いたら、私が拭いてあげる。だから、いっぱい泣いていいよ？ずっとそばにいるから』
「っ、A、A、A……！」
そう言ってくれるから、嬉しくて強くAをまた抱きしめた。
「なんかAが幸せそうで……それが嬉しくて、も、ダサ……」
子どもみたいに縋るように泣く俺を、優しく抱きしめてくれるA。
『ううん、ダサくないよ。今、世界で1番かっこいい泣き顔、1番綺麗な涙』
すげー優しく抱きしめ返してくれて、またポロポロ涙が出た。
「Aで良かった……Aがいてくれて良かった。Aがこの世界に生まれてくれて、俺と出会ってくれて本当良かった」
『んふふ、うん！』
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作者名：鈴
| 作成日時：2015年7月28日 20時
