ダールベルグデージー6【ars/K.N】 (ページ33)

今日:3 hit、昨日:8 hit、合計:183,066 hit

33 ページ33

「うんとね、何回も言うけど、そこはAが気にするとこじゃないんだよね。そもそも人はね、多少なりとも他人に迷惑をかけて、かけられて生きていくのが当たり前なの。それに自分の知らないところで自分の知らない人が、自分の好きな人を思って泣いてるかもなんて考えてたらキリがないよ？」

『うん……』

「そんな事考えて生きてたら何にも出来ないから。自分がこの人と結婚する事で、傷つく人がいるから結婚しないなんて、今の時代おかしな話でね？誰も傷つかない恋愛なんて、どこにもないから。A自身が全く知らない、見に覚えのない不特定多数の人のことを思って、自分の本当の気持ちを抑えて伝えないなんて、絶対ダメだよ」

『はい……』

私が小さく返事をすると、子どもを宥めるみたいに、お利口さんだねって言ってくれる。

『あのね、それは違うってまた言われちゃうかもしれないけど、どれだけ時間がかかってもいいから、かずくんと手を繋いで、明るい時間に2人で歩ける日が来たらいいな……とは思った』

「ん、そっか……」

『うん……』

ちゃんと私の気持ち伝わったかな……。

.

バックミラーからはちょっと暗すぎて表情が読めないから

Aの声だけで、気持ちを汲み取る。

視線が交わることがないからか、比較的スラスラ話してくれてるような気もする。

やっぱり、怖いよなぁ……。

今言われたら、そうだよなってわかってあげられるのに

どんだけ、心に余裕なかったんだよ。

本当、だっせ……。

「ごめんね？分かってやれなくて」

『ううん。私こそ……ごめんなさい』

Aは何にも悪くないのに、Aの方が申し訳なさそうにするから

空気を変えるために、少しだけ明るい声で話を変える。

「でもさ、本当に心配した。もうね、Aいなくなって寂しすぎて泣いたわ」

『えっ、本当？』

「本当(笑)マネージャーにもメンバーにも怒られて。おまけに坂口にも何やってんだって怒られて。35にもなってこんなに怒られると思わなかった！しかもプライベートで」

『じゃあ、坂口君にホテルの場所教えてもらったの？私は言ってないのに、誰に聞いたのか不思議だったの』

「そうだよ。でもいなくなったことに動揺しすぎて坂口の存在忘れてて(笑)ほんと助かったー」

『坂口君に感謝だね！』

俺の雰囲気に飲まれるように、Aの声にも明るさが戻ってきた気がした。