ダールベルグデージー6【ars/K.N】 (ページ20)

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『残念。離してくれる？私だって行くとこあるの。かずくんが知らないだけで。それに、出てけって言ったり、いろよって言ったり何なの？私の気持ち弄んでんの？年下だからって、いつまでも馬鹿にしないで』

そう言って、俺が期待した涙は一粒も流さずに

見たことないくらい悲しくて、寂しくて、苛立ったような

いろんな感情が詰まった目で睨んでくるから、その表情に力が抜けちゃって

掴んでたAの手首をそっと離すと、思ってたよりも強い力で掴んでたのか

Aの細い手首が赤くなってた。

あぁ……こんな顔をさせたかったわけじゃないのに……。

『じゃあね？そんな顔してちゃ、ファンの人悲しむよ？ちゃんと笑顔で楽しそうにしなくちゃ。かずくんは、みんなの二宮和也、なんでしょ？』

呆然と立ち尽くしてる俺に、そう言い残してAは出て行った。

普段、俺のことをいい意味で嵐として見てくれてないAの口から

“かずくんはみんなの二宮和也なんでしょ”

この言葉の裏には

私が見てるのは、もうあの大好きないつものかずにぃじゃない

って否定的ことを言われてるみたいな気がして

重く、強く、一瞬にして俺の身体にのしかかってきた。

胸が苦しすぎて、息ができなくて、気が付いたら膝から崩れ落ちてた。

A自身、そんなこと言いたくなかっただろうし

俺だって言わせたかったんじゃないのに……。

追いかけたいのに、足が重くて動けないし、目の前が涙で滲む。

こんなことになるはずじゃなかった。

Aの本当の気持ちが聞きたかっただけなのに。

「A……！」

精一杯呼んでも、もうとっくに玄関は閉まってるから聞こえるはずないのに……。

「ぅ、あぁ……！」

Aが出て行った玄関を見つめて、声にならない声で

床にうずくまって静かに泣いた。

どれくらい経ったのか、しばらくするとカチャンって音がしたから

「A……？！」

戻ってきてくれたのかと思って、勢い良く顔を上げたけど

それが俺とAのマグカップが、ずれた音だって気づいて、また悲しくなって、項垂れた。

頼むから戻ってきてくれよ……。