ヒメユリコンペティション【ars/K.N&S.S】 (ページ21)

今日:3 hit、昨日:5 hit、合計:79,300 hit

21 ページ21

和「あぁ、この前の全校朝礼で声かけたのにですか？ギターって花形なのにね」

『本当ですよぉ。弾ける子いるんですが、ベースがいいって言い張って……(笑)』

和「あー、分かる。ベースもいいなー」

『私も分からなくもないので、強く言えず。まぁ頑張るのみです。なので、今からカラオケBOXで自主練します』

片手は肩ベルトをしっかり持って、もう片方は、楽譜をチラつかせてそう言う。

生徒と話し合って決めた曲らしい。

これチャンスなんじゃね？

和「それ……俺も付いて行っていいですか？」

『えー？良いですけど。別に面白くないですよ？』

和「A先生のギター聴きたいじゃないですかー」

『私の下手くそなので良かったら』

和「やったー」

『今日も車ですけど良いですか？』

和「はい。いつもすみません」

『いいえ』

並んで職員室に行くと櫻井先生はもういなかった。

なーんだ、自慢してやろうと思ったのに(笑)

朝、言われた夏休みの課題を提出して

A先生の手から音楽準備室の鍵を受け取って、俺のと一緒に鍵庫に返す。

『ありがとうございます。行きましょうかー』

和「はぁい」

相変わらず小さな身体に似合わない、大きな車の後ろにギターを乗せて

眼鏡をかけてエンジンをかける。

でもちょっとかっこいいんだよな、この運転する横顔。

『行きますねー。私の家の近くのところでも良いですか？』

和「はい。そんな方向違わないんで」

ありがとうございますと軽く言いながら、車をゆっくり発進させた。

『二宮先生は、何か楽器弾けますか？』

和「ギターなら出来ます。あとちょっとピアノ」

『ええ！じゃあ二宮先生がっ……』

ちょうど信号が赤だったから、俺に前のめりで言ってくる。

和「僕が頼まれたわけじゃないので嫌です(笑)」

『あー、バレたかぁ……(笑)』

わかりやすくハンドルに頭を預けて、落ち込むA先生。

いい代役だと思ったんだろう。

和「A先生が弾くから良いんじゃないですか？その小さい身体と小さい手で」

『小さい小さい言わないでくださいよぉ。気にしてるんですからぁ』

和「小柄の方が可愛らしいじゃないですか」

『ふふ、ありがとうございます。そういうことにしときます』

いつも決して悲観的なことを言わない、

思ったとしても本気では見せないところが、A先生の良いところだなと思った。