ヒメユリコンペティション【ars/K.N&S.S】 (ページ11)

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翔「Aせんせー、もうダメだぁ。ここが難しすぎて、指が動きませぇん。本番まであと1ヶ月なのにぃ」

『大丈夫、大丈夫！あとここだけですから。他は出来てますので、櫻井先生なら大丈夫ですよ。自信持って』

櫻井「えー。もー」

ほぼ毎日家で練習して、週に何回かはA先生に無理を言って教えてもらってるが、なかなかうまくいかない。

A先生はこうやって励ましてくれるけど心が折れそう。

楽譜だって、始めた当初より簡単にしてもらったのにこのザマだ。

しかもピアノだけじゃない。

タイミングを見て、飯に誘っても

また今度♡

なんて躱される。

もういい加減、そろそろ飯も行ってくれ……。

行ってくれたら、言うことを聞かない俺のこの左中指と薬指が素直になる気がするんだ。

どうせ俺の身体は単純なんだから。

＊「Aせんせー」

『あぁ、どうしたの？文化祭のライブのこと？』

＊「うん。ちょっと相談乗って欲しい」

『良いよ。櫻井先生、すみません。私いませんが練習続けてください』

翔「はぁい」

軽音同好会の男子生徒が来てA先生を連れて行ってしまった。

気分が乗らないまま、仕方ないからポロンポロンと鍵盤を弾く。

翔「はぁ～」

今年の文化祭で、A先生、また何か楽器頼まれるのかなぁ……。

だとしたら俺の練習相手なんてしてる暇なさそう。

困ったなぁと思いつつ、去年の文化祭を思い出す。

バンドのメンバーがどうしても集まらなくて

困った生徒がA先生にメンバーになってもらえるように必死に頼み込んで

A先生は恥ずかしがってたけど、髪型変えて、制服着せてやらせてたんだよなぁ。

結局バレるんだけど、その姿がとにかくめちゃくちゃ可愛くて。

なかなかうちの男子生徒はやるな！と思った(笑)

今年もメンバー足りないのかなぁ。

この前はキーボードだったけど……今年はどうなんだろう。

ベースとかかっこいいんじゃね？

あんまイメージがないベースがまた萌えるというか。

まぁA先生だったら、なんだって良いんだけど。

翔「はぁ～」

『んー……』

翔「どうしたんですか？」

生徒との話が終わって俺のところに戻ってきてくれた顔は、さっきより曇っていて

俺の隣でグランドピアノに頬杖をついて、小さなため息を漏らす。