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「俺と付き合うと正直ね、嫌なこともあると思う。ハイリスクだとも思うし、苦労かけるとも思う。けど、俺はAちゃんが好き。だから嫌な思いをなるべくしないように頑張りたい。付き合ってください」
真っ直ぐ見つめられた瞳に胸が苦しくなった。
ほんとだよ？と赤い唇が動く。
何か言わないといけないのに、身体が硬直して、口すら動かせない。
「いや、かな……？」
何も答えれない私を困った顔で見つめてきた翔さん。
息を細く、静かに吸って吐く。
どうやら夢でもなければ、嘘でもないらしい。
「何で泣くの……？」
翔さんに言われるまで、涙が溢れていたことに気付かなかった。
翔さんの骨張った大きな手が、私の頬に恐る恐る触れて、涙を拭う。
ただそれは、もちろん嫌なわけじゃなくて、夢みたいでびっくりしたから、思わず出てしまった涙。
「迷惑だったよね。ごめんね。忘れて？今の話……」
『せ……です……』
私も伝えないと誤解されたままだと思って、緊張で狭まっていた喉から絞り出した言葉は、翔さんにはうまく伝わらなくて
「ん？なに？」
『……き、です』
「ははは、聞こえないな？(笑)」
『せ、んぱいが、すきっ……！』
大粒の涙が頬を伝うのも厭わず、一生懸命その言葉を吐き出した。
その必死さ？に翔さんが優しく笑って、ふわりと抱きしめてくれた。
「ふふ、知ってたよぉ。でも俺もずっと好きだったけど、振られるの怖くて確実なタイミング探ってた」
翔さんも私のこと好きでいてくれて、しかも私の気持ちも知ってたなんて……。
信じられなくて、恥ずかしくて、翔さんの腕の中でくぐもった声で聞く。
『私で、いいんですか？』
「良いんですよ。Aちゃんが良いよ。Aちゃんは？僕で良いですか？」
『先輩じゃなくちゃ、嫌です……』
「やった(笑)」
腕が解かれたかと思ったら、照れ臭そうな翔さんの顔が私の瞳が捉えた。
翔さんの真っ直ぐで真っ黒な瞳に吸い込まれそう。
「目ぇ開けてたらキスしづらいから閉じなさい」
翔さんの手で目を隠されて、触れるだけのキスを一つ、二つ……。
初めて触れた唇は、柔らかくて、熱くて、タバコとお酒の香りがした。
目隠しされていた大きな手が退くと、優しく私の肩に触れて、真剣な翔さんの顔と声。
「もっかい言うね。好きだから。すごく好き。大好き。守るよ。だから、俺のそばにいて？」
『……はい』
「はぁ……緊張した！(笑)」
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作者名：鈴
| 作成日時：2020年1月21日 13時
