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母「気を付けなさいね！」
『分かってる』
父「たまには帰って来いよ」
『ん』
とも「本当にいいの？先輩に行くこと言わなくて。後悔しない？」
『しない。多分これから少し騒がしくなるかもしれないけど、くれぐれも何も言わないようにお願いします。お母さんたちも。無視してね。私の居場所は絶対に誰にも言わないでよ』
母「分かってるけど……」
父「大丈夫」
とも「私たちはAの味方だから。気をつけて。たまには連絡頂戴ね？」
『ありがとう。着いたら連絡する。行ってきます！』
父母とも「いってらっしゃい」
いまから行く国も、日本を旅立つことも、もちろん翔さんには言わなかった。
言ったとしても、忙しいから来られないだろうし。
新しく買い替えた携帯には、両親とともちゃんの3人の名前しか入れなかった。
私にはもう翔さんの番号はいらないから。
不安と期待を胸に、私は日本を出た。
離陸する飛行機。
窓際の席にしたから、どんどん街が小さくなって、あっという間に雲の上を飛んでいく。
『はぁ……』
お父さんにはああ言われたけど、2年は絶対に日本には帰らないつもり。
その後のことはまだ決めてないけど、出来ればそのまま海外で働きたいと思ってる。
そこまで日本に未練ないし。
22年くらい住んだ日本のことを、こんなにも呆気なく捨てるように海外へ行く私。
それだけ心が死んでいた証拠なのかもしれない。
それからぼんやりと目を閉じて、翔さんを想う。
別れ話の時に聞かれたけど、嫌がらせされていたことだけは絶対に言いたくなかった。
だって翔さんには罪悪感も感じて欲しくないし、責めて欲しくないから。
そして、もうすぐ世に晒されるであろう、嵐の櫻井翔と私が付き合っていた記事。
本当はもう少し後に行く予定を、この事があるから無理を言って早めてもらった。
実は先月、マンションの前でマスコミの人に呼び止められて、写真を突きつけられた。
翔さんと時間差で飲食店から出てきた写真。
その後、翔さんの車の後部座席に乗り込む私と運転席にいる翔さん。
それから、卒業式に迎えにきてくれた時のもあった。
＊「これ、貴女ですよね？」
『違います……』
＊「そうかな？首のほくろの位置とか、えくぼも似てる。今日履いてるヒールも、肩に掛けてる鞄もこの写真と同じものだし」
何枚もある写真をトランプのカードのように見せてきて、動揺した。
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作者名：鈴
| 作成日時：2020年1月21日 13時
