白椿【ars/S.S】 (ページ20)

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翔さんの腕の中はすごく安心する。

だからすぐに眠たくなるの。

あったかくて、優しくて、少し硬い腕枕が好きだったなぁ……。

いつの間にか、いつも通り、翔さんに愛されたあと浅く短い眠りについていたんだろう。

翔さんが私の頬を撫でる感触とため息で、目を覚ました。

少しずつ覚醒していく中で、翔さんに精一杯の感謝とごめんねを伝えたら

翔さんが私に聞いて来たから、この月明かりだけの部屋と

大好きな翔さんの腕の中でなら、心乱さずに、ちゃんと伝えられるかもって思った。

『んー……掃除が大変なのは否めないかな。せっかくやっても毎回来るたびに誰かさんが汚してくれてるから(笑)』

「あー(笑)だよなぁ。寄せて終わりにしたのは悪い。あと書類やら台本やら、Aは触らないの分かってたのに。ごめん」

『ううん。あとね？私、やりたいこと見つけたの。だから翔さんとお別れした方がいいと思った。ごめんなさい。誤魔化して。でも、家事が疲れたのも嘘じゃないよ。広いから、翔さんのお部屋』

翔さんにしか聞こえない小さな声で、ゆっくりと、素直に言葉をこぼす。

翔さんの穏やかな鼓動と、柔らかな声が鼓膜を震わせた。

この声もすっごく好きだったなぁ……。

「だとしても何で最初からそう言わないんだよ。マジで嫌われたかと思うだろ。ウザかったかなとか、求め過ぎたかなとか」

翔さんは普段のもだけど、特にバイト先の飲み会の連絡しないと、ちょー怒って来たり

私が翔さんの知らない男の人と話してるとやきもち妬いてきたり

1日何してたか詳しく言わないと拗ねたり

夜遅い時間に歩かなくちゃいけない時は、なるべく翔さんと電話しながら帰らないといけないとか

短いスカートは翔さんといる時しかダメとか

とにかくうざいことも、過保護な時も少なくはなかったかな……(笑)

それに私に完璧とは言わずとも、自分に釣り合うようなことを求められているのも伝わっていて

私なりに頑張ってはいたけど、翔さんから詳しく何かを言われるわけじゃないから

何をどうするのが正解なのかわからなすぎて、難しかった。