白椿【ars/S.S】 (ページ11)

今日:3 hit、昨日:1 hit、合計:98,505 hit

11 ページ11

安堵したのか、私の返事を聞いたら項垂れて、乾いた笑いをした翔さん。

『私もです。でも先輩が私の気持ちに気づいてたのが恥ずかしいです。いつからですか？』

「結構前だよ。でも出会って気づいたら俺も好きで、あれ？向こうも好きじゃね？って(笑)」

なんだろうねって2人で笑って、それからまたキスを何度かして

「今日は帰るね？このままいたらAちゃんのこと食べちゃいそうだから(笑)」

『っ……！』

何のことか分からなくて、一瞬頭の中が止まったけど

すぐにその意味を理解したら恥ずかしくて、心臓がギュッと縮まって苦しくなった。

「これくらいでそんな緊張されたら、その時になったら心臓止まっちゃうかもしれないから(笑)」

そう言いながら、玄関まで見送る私の頭を抱えてまたキスをくれた。

「それから先輩もいいけど、これからは俺のことを名前で呼びなさい。命令です」

『……努力します』

「ん、じゃあまた。A？」

急に呼び捨てにされただけで顔を真っ赤にした私見て、笑いながら出ていった翔さん。

その場に膝から崩れて、夢見たいな現実に浸って、溶けるように寝転んでしまった。

この日のことは死んでも忘れられないと思った。

たくさんの人に囲まれている翔さんは、教授に用があるんだと誤魔化して

人混みをかき分け、私たちの前にやってきた。

「ともちゃん、Aちゃん、卒業おめでとう。2人ともドレス似合うねぇ？」

怪しまれないように、私のこともよそ行きに呼ぶ。

とも「先輩は相変わらず人気者ですね？」

「ねー(笑)仕方ないよね、櫻井翔だもん」

なんて、わざと手を腰に当てて、アイドルスマイルをした。

とも「Aのこと、頼みますね？あんまり縛りつけないでくださいよ？」

「ははは、気をつけます。A？伝えた通り迎えにきた。離れたところに車止めてあるから、しばらくしたらおいで？」

『ん。ありがとうございます』

「じゃ、また後で」

今度は耳元で、ともちゃんと私にしか聞こえないようにそう言って離れていった。

そんなことしたって、私と翔さんの関係、みんなにばれてるよ……。

とも「ほーらね。パニックになるの分かってて迎えに来てくれて。愛してなかったら来ないって。てかさ、先輩に嫌がらせのこと何で言わないの？」

ドレスの裾を見ながらともちゃんが言う。