鈴蘭の咲く頃4【ars/S.S】 (ページ9)

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その時……

リビングのガラステーブルの上に置いてあった、Aちゃんの携帯のバイブが思いっきり鳴った。

『ん、電話。もしもーし……？』

ガラスの上だから、びっくりするほど大きな音が出て、咄嗟にAちゃんの腕を解いてた手を退ける。

そのバイブ音はまるで、これ以上触るなっていう俺に対する警告音に聞こえて

Aちゃんに対する罪悪感とか背徳感が、いつにも増して俺の胸をいっぱいにした。

『ん、ん、んー』

俺のキタナイ欲望に気付かずに、微睡んだまま電話してる人魚姫。

でもさ、言い訳させて。

もう5ヶ月付き合ってんのに、キス止まりなんだよ？

好き同士の相手ならさ、きっと数え切れないほどキスして、身体も重ねてると思うんだ。

なのに微妙に隙がなくて、微妙に無防備なAちゃん。

こうやってタイミング悪く？毎回電話じゃないにしろ、そういう雰囲気に俺がなってると、邪魔される事も、交わされることも少なくなくて。

だから、その俺のモヤモヤも気付いてくれなくて、いつも消化不良の気持ちが部屋ん中を彷徨ってる。

『えっ？！うっそ！本当？知らなかった！うん、うん。ありがとー！んー？ふふん。そうだよ。いいでしょ？』

俺の腿に足を乗せたまま、可愛い声で、友達と電話する小悪魔マーメイド。

時々俺をふわふわとえくぼが出来る笑顔で見てきてさ。

いろんな意味で辛いわ。

なんの穢れもない、その綺麗な笑顔で見られちゃったらさ

やっぱ、なんも出来ねぇじゃん……。

しばらくしたら電話を切って、携帯をまた机の上に置いた。