鈴蘭の咲く頃4【ars/S.S】 (ページ13)

今日:6 hit、昨日:9 hit、合計:160,821 hit

3 ページ13

話しながらお店を出ると、車に凭れて翔くんが俯いて片手をジーンズのポケットに入れながら、待っててくれるのが見えた。

何かのドラマのワンシーンみたい……///

かっこいいなってちょっと見惚れてたら、翔くんもお店から出てきた私に気がついて、手を振ってくれるから振り返す。

『じゃあ、またね？楽しかった！』

みんなの方をもう1回見ると、視線が私の後ろに向いてるから振り返ると、薄く笑う翔くんが近づいてくる。

「みんな久しぶりだね。水族館以来かな？今日はAのこと、ありがとね」

『翔くん……？』

「これからも普通の友達として、遊んであげて？でね、これからは俺とも仲良くして欲しいなって」

5人「えっ……？」

「だから、番号交換しようよってこと」

今まで見たことないくらい、冷たい顔で笑いながら、ジーンズの後ろポケットから携帯を取り出して、少し強引に番号交換をし始めた。

みんなもそんな翔くんの行動を断れなくて、順番に携帯に連絡先を登録していく。

何でこんなことするんだろ……。

なんか意味があるのかな……。

「ありがとね？じゃあ、A、行こうか？」

『……はい』

翔くんの車に向かいながら、呆気にとられてるみんなに気をつけて帰ってねって手を振ると

みんながまだ見てるのに、手を振ってない方の手を、翔くんが強く握ってくるから

その手に感じた痛みに少し恐怖を覚えた。

『翔くん……？』

「見せびらかしてんの。俺のAってとこ。取られないように」

『誰も取らないと思いますけど……』

目線は合わないけど、いつもの翔くんよりちょっと手の握り方が強引で声も冷たい気がする。

「わかんないよ。向こうは諦めたかも知んないけど、それでもいつか人の気持ちは変わって、Aのこと、俺から取るかもしんないじゃん？」

乗って？って、やっぱり目線が交わることのないまま、助手席側のドアを開けてくれる。

『翔くんは……変わっちゃいますか？』

私のこの気持ちが変わらない限り、絶対に取られることはないし

まぁ……人の気持ちとか心は、どんな感情にしろ変わることはあるだろうけど

そう言う翔くんの言動に、温度と気持ちが全くこもってないし

さっきから、いつもの優しい翔くんじゃないから、それがすごく寂しくて、怖くて

もしかしたら、私への気持ちも悪い方にいつか……って、思ったら心臓がキュッと締め付けられた。