秘め事 ページ10
はたと眼が覚めて隣を見やれば、一夜だけの恋人の姿。
どこの誰かも分からない。
全身に吐き気が転移していく。
のそりと床から起き上がり、厠へと急ぐ。
本来、花魁としてあってはならない行為だ。
客を起こしてしまったり、客より早く床から出るというのは失礼に値するのだ。
けれど、女性が起きる事は絶対にないと自信を持って言える。
「僕が、気絶させるまで犯し尽くす絶倫と呼ばれている事、彼女は知っていますかねぇ。」
酒の力も借りた吐き気は最高潮に達していく。
昨晩は最悪であった。
中々 気絶しない苛立ちときゃんきゃんとうるさい矯声。
思い出すだけで気分が悪くなる。
嗚呼。
「Aに会いたい…。」
その可憐な唇で僕の名を紡いで欲しい。
その今にも折れてしまいそうな細く、柔い腕で僕を掻き抱いて欲しい。
その愛しい声に矯声を上げさせてみたい。
ぐるぐると黒い欲望は僕を可笑しくさせる。
厠から出ると自身の部屋へは戻らない。
これも何時もの習慣である。
彼女の部屋は把握済み。
夜這いをする事だって、本当は出来るのだ。
「けれど、してやりませんよ。今までの積み重ねを壊すなんてもっての他ですからねぇ…。」
彼女の頬をするりと撫でれば、小さくみじろぐ。
けれど、また直ぐに小さな吐息を立てて眠ってしまう。
「今だけは、僕と貴方の秘密にして下さいね。」
クスリと笑みを溢して、僕はAの額へと口付けたのだった。
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ちょこ2(パソコン変わりました≪元ID 5ad0b4ef6a≫)) - 更新が止まってます!戻ってきてください!続き楽しみにまってます!(´;ω;`) (10月3日 23時) (レス) @page43 id: c7ac99c812 (このIDを非表示/違反報告)
はおと(プロフ) - おっもしろいな〜!!!!! (2021年9月28日 15時) (レス) @page36 id: 36f12069ba (このIDを非表示/違反報告)
Haoto(プロフ) - すごく続きが気になる終わりかただ~…。面白いので、更新、できたらで良いので書いてもらえたらすごく嬉しいです…!! (2021年8月30日 3時) (レス) id: e9d14425e3 (このIDを非表示/違反報告)
ナナ(プロフ) - 応援してます!頑張ってください! (2021年8月14日 14時) (レス) id: 5ba492e76b (このIDを非表示/違反報告)
しろ時雨(プロフ) - 主人公がかっこいい!憧れます! (2021年8月10日 8時) (レス) id: b4c51071c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雫月 彗 | 作成日時:2019年12月29日 19時