月華繚乱【浦島坂田船】

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「お、センラさんやんか。」

「花魁道中、上手く間に合ってくれたみたいで良かったです。」




買い物からの帰り道。
花魁道中を行う小百合とすれ違った。
かなりギリギリの時間で別れたので、間に合うか少々不安ではあったが、上手く間に合ってくれたようだ。



「あら、紫薔薇はん。貴方も御一緒してくれませんか？」



私たちに気付いた小百合は、そう紫薔薇に誘い掛けた。
ちらりと彼を見る前に、私はそそくさと退散させて頂く。

きっと後で死ぬ程 怒られるだろう。



「………もう居らんし…。ほな御一緒させて頂きますわ。」




*


とてつもなく気分が悪い。



この時間帯の店は繁盛する。
イコール、喘ぎ声諸々が飛び交っているという事だ。
店としては大歓迎だろうが、私としては吐き気がする程 居心地が悪い。

うちの店は基本 本番禁止なので、女性達が孕む事は無い。
但し、女性が花魁を買った場合、話は別だ。
買われた花魁はこの店を卒業するという制度になっている。
うちのトップ4人にも勿論それは当てはまる。
但、あの4人は信じられない程の値が張る。
中々 手出しが出来る女性は居ないが。






『A。あの4人の中で結婚相手を決めなさい。彼等もそれを望んでいる。』






私が禿として働く時に、父に言われた事だ。
うちの父は私に結婚をさせたいみたいであった。
あの4人の誰かの中からという訳の分からない条件付きで。







「花魁となんか結婚する気ないんだけど…。」

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