検索窓
今日:26 hit、昨日:22 hit、合計:123,101 hit

ページ41

慌てて部屋から出て行った彼女を見つめる。



「"優しい"…ねぇ。」



先程 彼女に言われた言葉を反芻すれば、ずくりと心臓が痛んだ。
彼女はああ言ったが、俺はただただ自身が情けないとしか思えない。
本当はあのままセンラとの秘め事の全てを暴き倒して、それを餌に組み敷いてやれば良かったのだ。
彼女も子供じゃない。
恋愛の1つや2つ経験してもいい年頃だ。
けれど、俺たちのせいで仕事を詰めすぎてそれどころではないのだ。



「堪らんなぁ…あの顔。」



驚きから少しだけ目を見開き、頬を朱に染めたあの顔。
見るに、彼女を赤面させられるのは俺だけではないかと思う。
他の奴等は、大抵 主導権を彼女に握られているように思うからだ。



「そう考えると、まだ優位な立場…なんかねぇ。」



呟いた声を掻き消すように、背後の襖が無遠慮に開け放たれる。
ちらりと横目で彼を視界に入れれば、何とも渋い顔をされた。



「何や、浦田さんのとこ行けって言うたんやけどなぁ。」

「一目散に駆け出してったよ。」

「こら後で怒らんとな。」



むすくれた様子を隠す素振りもなく、当たり前のように俺の部屋へと入ってくる彼。
この顔は、全部吐かせるまで帰らん感じやな。
一瞬で悟った圧に気圧され、降参のポーズを取る。



「はいはい。全部話すから。」







「てな感じかね。」

「彼奴が赤面してたのはそういうことね。謎が解けた。」



頬杖をついて自身の爪を眺める彼は、興味無さげに呟いた。
普通の奴ならこの態度にブチ切れるところだが、彼だから許せる。
何故なら、彼に限ってこれで"はい、解散。"なんてことにはならないから。
俺の勝負は、恐らくここから。



「…で?1番大事なこと聞いてねぇんだけど?






何で急に彼奴と話したいなんて相談持ちかけてきたわけ?」



さぁ。
俺は果たしてこの人を上手く欺く(・・)ことはできるのだろうか。

・→←・



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (251 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
772人がお気に入り
設定タグ:浦島坂田船 , 歌い手 , 花魁
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ちょこ2(パソコン変わりました≪元ID 5ad0b4ef6a≫)) - 更新が止まってます!戻ってきてください!続き楽しみにまってます!(´;ω;`) (10月3日 23時) (レス) @page43 id: c7ac99c812 (このIDを非表示/違反報告)
はおと(プロフ) - おっもしろいな〜!!!!! (2021年9月28日 15時) (レス) @page36 id: 36f12069ba (このIDを非表示/違反報告)
Haoto(プロフ) - すごく続きが気になる終わりかただ~…。面白いので、更新、できたらで良いので書いてもらえたらすごく嬉しいです…!! (2021年8月30日 3時) (レス) id: e9d14425e3 (このIDを非表示/違反報告)
ナナ(プロフ) - 応援してます!頑張ってください! (2021年8月14日 14時) (レス) id: 5ba492e76b (このIDを非表示/違反報告)
しろ時雨(プロフ) - 主人公がかっこいい!憧れます! (2021年8月10日 8時) (レス) id: b4c51071c3 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:雫月 彗 | 作成日時:2019年12月29日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。