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ぴしゃりと閉められた襖を前に、ただ立ち尽くす。
一瞬見えた彼奴の表情は困り顔全開で、笑ってしまいそうな程であった。



「俺も含めてだけど…随分と厄介な奴等に好かれちゃったね。」



襖の向こうは静まり返っている。
背中越しにきっと聞こえているかもしれない。
寧ろそれに少し期待している自分がいる。


彼女は知らないだろうが、彼は独占欲の塊のような人間なのだ。
坂田も大概だが、彼は独占欲の使い方が未だ分かっていない。
だから素直に自分の欲望を伝えることで、"独占欲"から"ありのまま"に塗り替えていく。
だから自身の欲望に忠実に従っていても、周りから見れば素直な可愛い子に見えるのだ。

但し、彼。志麻は違う。
"独占欲"の使い方を十分過ぎる程に知っている。
何故なら彼の客は、皆そういう厄介な奴等ばかりだからだ。
幼い頃からそういう奴等に触れていれば、自然と世渡りというものを学んでいく。
勿論、俺にも世渡りを学べる客がいて、他の2人にもそれがいる。
そいつらの傾向を学ぶ俺等は、自然とそういう人格を形成していく。



「あまり虐めてやるなよな。」



こうやって彼女を奪い返せない所は、つくづく俺に世渡りを教えてくれた人に縛られてしまっていると感じる。

駄々を捏ねるな。
最年長だから。
愛しているなら。

本音を言えば、今すぐに乱入して奪い返したい。
彼が何をやろうとしているのかわからない以上、彼女を渡すべきではない事は容易に想像がつくのだが、それでも彼等の事も信頼しているからこそ、些細ないざこざは最初に潰しておきたいのだ。
彼の様子を見るに、彼女に何かしらアクションを起こしたい素振りだった。
それがどう転ぶかは分からないが、その為に俺がいる。


自身を無理矢理納得させ、向かいの襖を開け放ち、部屋へと入っていく。
察しがいい彼ならば、俺が近くにいるという事は分かっているだろう。
ならば、様子見といこうではないか。

騒つく心を鎮める為、俺は花を生け始めるのであった。

・→←我慢



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ちょこ2(パソコン変わりました≪元ID 5ad0b4ef6a≫)) - 更新が止まってます!戻ってきてください!続き楽しみにまってます!(´;ω;`) (10月3日 23時) (レス) @page43 id: c7ac99c812 (このIDを非表示/違反報告)
はおと(プロフ) - おっもしろいな〜!!!!! (2021年9月28日 15時) (レス) @page36 id: 36f12069ba (このIDを非表示/違反報告)
Haoto(プロフ) - すごく続きが気になる終わりかただ~…。面白いので、更新、できたらで良いので書いてもらえたらすごく嬉しいです…!! (2021年8月30日 3時) (レス) id: e9d14425e3 (このIDを非表示/違反報告)
ナナ(プロフ) - 応援してます!頑張ってください! (2021年8月14日 14時) (レス) id: 5ba492e76b (このIDを非表示/違反報告)
しろ時雨(プロフ) - 主人公がかっこいい!憧れます! (2021年8月10日 8時) (レス) id: b4c51071c3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:雫月 彗 | 作成日時:2019年12月29日 19時

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