月華繚乱【浦島坂田船】

揺れる ページ31

自身が吐き出す紫煙が揺れる。

この背中超しの襖1枚隔てた向こう側で、一体何をしているのか。
俺はどっかの阿呆とは違うので、この状況で、襖を馬鹿みたいに開け放ちはしない。

じっくりと様子を窺う。
彼女を屈服させられる(手に入れられる)のならどんな手段も厭わない。



「見ーけちゃった。」



俺に内緒で秘め事たぁ、いい度胸だ。
センラも、Aも。

彼等は2人だけの秘密と思っているみたいだが、今起きているこの状況も、あの台所の件も、俺は知っている。
何故なら、本来は俺が一番最初に見つけていたから(・・・・・・・・・・・・・・・)だ。


あの時、俺は彼女の啜り泣く声を聞いていて、扉を開けようと試みていたが、扉は内側からしか開かない仕様だったのだ。
だったら、時間を掛けて怖い思いをさせるよりかは、この扉の仕組みが分かるであろう大人に頼もうと、買い出しを呼びかけている雅さんを呼ぼうと走ったのだ。

けれど、どうだ。

急いで戻ってきてみれば、センラと2人で手を繋いで、けろっとしているAの姿があった。


俺の方が早く見つけていたのに。


あの時、どうしてもっと上手い考えが出てこなかったのか。
どうして彼女にあの場に居た事を言い、彼奴らだけの秘密にすることを阻止しなかったのか。
虚しい後悔ばかりが押し寄せてくる。



「でもまぁ。今は絶対にこれだけは(・・・・・)阻止せんとなァ。」



相変わらず性格が歪んでるのは自分でも分かっている。
けれど、向こうがその気なら俺も本気でAを落とさなきゃならない。









頭は勿論。
身体も使ってな。

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