月華繚乱【浦島坂田船】

(・) ページ23

ここは彼等、特に彼(センラ)との思い出深い場所だ。








『かくれんぼしましょ』



一体誰が言い出したのかは、時が経ち過ぎて定かではないが、私も彼等もまだ幼かった時の話だ。

この時、店はまだ繁盛しておらず、暇を持て余している日の方が多かった為、皆２つ返事で了承した。




「いーち、にーい…」




そうして始まったかくれんぼの隠れ場所に私が選んだのは、お察しの通り、たった今抜けてきたこの掛け軸の裏通路だ。
最初に言ったが、この場所は『もしもの為にと、母の案で備え付けられた襖(通路)』なのだ。
つまり。



「ここなら絶対に見つからない！」



全く、幼さとは恐ろしいもので、人の話を聞いているようで聞いていない。
子供ならではの負けず嫌いが、こんな所で力を発揮してしまったのだ。




「買出しに行くわよ〜」




待てど暮らせど一向に見つかる気配がない。


当たり前だ。
私が隠れた場所は裏通路の出口付近で、店の1番西側に出る為、皆が隠れた場所の付近(店の出入口にもなっている東側)から放たれた前述の声が聞こえていなかったのだ。

花魁の化粧道具や着物、簪等は、基本禿である私たちが買いに行くのだが、華月(うち)は月に1度、街を知る為という名目で、花魁も含めて皆で買出しに行くのだ。
つまり、その間は店に誰もいなくなるということである。
運が悪いことに私は、かくれんぼの最中にその月に１度にぶち当たってしまったのだ。

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