・ ページ21
喧騒をどこか遠くに感じながら、お冷の用意をする。
私もあの父親にかなりの酒を呑ませられていたので、立っているだけでふらついてくるのだ。
当然 頭も視界も靄がかかる。
「あ、」
グラリと倒れた身体を支えたのは…
「舞妓さんが酔っていらっしゃるなんて、このお店はどうなっているのですか? Aさん?」
バレていた。
声の主は、本来なら今頃まだ酒盛りをされていなければならない人。
つまり。
「お手洗いで?」
大地主の娘。
「いいえ? 何やら貴女方が企んでいらっしゃるような気がしまして。ほら私、そういうことに敏感なもので。」
紅を差した目元が妖しく細められる。
ここまで勘がよかったとは。
私たちは少々 彼女を侮っていたようだ。
「舞妓に転職でもしましたの? 嗚呼でも、迎えは貴女にやってもらった記憶がありますわ。」
痛いとこを的確に突いてくる。
私が黙っているのをいいことに、ペラペラと捲し立てていく娘。
そしてこれがとどめだと言わんばかりの一言。
「はっきり言いまして貴女、目障りなんですよ。」
何ともはっきりと言ってくれる。
心が脆かったらどうしてくれるのだ。
そんなことを考えていれば、肩を強く押され、着物などあまり着たことのない私は、ものの見事に裾を踏み付け後ろに転倒。
「私に大事な商品……いえ。大事な恋人の内の1人が取られるのをここで待っているといいですわ。」
ピシャリと襖を閉め、高笑いをしながら去っていく。
一応 襖を開こうと試みるが、やはりそんな平凡なミスは犯していない。
外側から何かで押さえつけられている。
1人では、襖を壊さない限り外に出られないだろう。
「うーん…。まぁ別に壊しても大丈夫だろうけど、出来れば経費は削減したい。」
さて。
どうしたものか。
772人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちょこ2(パソコン変わりました≪元ID 5ad0b4ef6a≫)) - 更新が止まってます!戻ってきてください!続き楽しみにまってます!(´;ω;`) (10月3日 23時) (レス) @page43 id: c7ac99c812 (このIDを非表示/違反報告)
はおと(プロフ) - おっもしろいな〜!!!!! (2021年9月28日 15時) (レス) @page36 id: 36f12069ba (このIDを非表示/違反報告)
Haoto(プロフ) - すごく続きが気になる終わりかただ~…。面白いので、更新、できたらで良いので書いてもらえたらすごく嬉しいです…!! (2021年8月30日 3時) (レス) id: e9d14425e3 (このIDを非表示/違反報告)
ナナ(プロフ) - 応援してます!頑張ってください! (2021年8月14日 14時) (レス) id: 5ba492e76b (このIDを非表示/違反報告)
しろ時雨(プロフ) - 主人公がかっこいい!憧れます! (2021年8月10日 8時) (レス) id: b4c51071c3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:雫月 彗 | 作成日時:2019年12月29日 19時