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「…さぁてと。彼奴等にも教えてやっか〜。」
「先程と言っている事が完全に矛盾していますが…。」
私からの質問に『ほら、俺ってさ。抜け駆けも嫌いじゃん?』と笑みを溢す彼の顔付きは、いつの間にか元通りになっていた。
「渉さんは、そうじゃないとですね。」
彼の部屋を出る間際にそう溢す。
恥ずかしくて彼の顔なんか見れない。
初めて下の名前で呼んだのだ。
恥ずかしくて当然だ。
「えっ、ちょっ!? Aもう一回! ねぇ! A!!」
「絶対に嫌です。」
この時の私は、歩み寄る怪しげな影に気付いていなかった。
・
「…ほんで? 俺らが買われてしまったら、Aちゃんはどう落とし前つけてくれるん?」
「ま、こうなるわな。」
先程、浦田さんが気付いた事を彼等に話せばこのざまだ。
「いや。文句なら私ではなく、父に言って下さいよ。」
そう。
元を辿れば全くと言っていい程、私は無関係。
裏で勝手に決められていた事なのだ。
落とし前もくそもない。
というか買われてしまえば此方としては万々歳なのだが…。
そんな事をふと思ったりもしたが、そんな事を言ってみろ。
私の貞操に関わってくる。
「Aが今 思った事に関してはとりあえず目を瞑りましょう。ですが、問題はどう切り抜けるかですねぇ。」
「黄百合。勝手に心を読まないで下さい。」
全く、油断も隙もあったもんじゃない。
「娘が来るのは今日。金を巻き上げられるだけ巻き上げて、結婚の願いを提げさせるように仕向けなきゃならない。」
「俺がそいつを張らせてる奴によると、第一希望はセンラさんらしいで。」
いや。
しれっと客を忍役にしてる奴がいるぞ。
「まぁ…一番簡単に買えそうな雰囲気やもんな、お前。」
「何ですって? 赤桜?」
「ちょっ、センラ、す、ストッ、ストップ! ギブっ!! ギブやから!!!」
黄百合にアッパーを掛けられている赤桜が暴れている。
だからあれほど自分の発言には責任を持てと言ったのに…。
というかこんなでは話し合いが進まないではないか。
「あ。」
未だにアッパーを掛けられている赤桜が唐突に閃いた事というのは、何とも単純明快で何とも滑稽な作戦であった。
「Aが客のふりして、俺らの事 買えばええんちゃう?!」
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ちょこ2(パソコン変わりました≪元ID 5ad0b4ef6a≫)) - 更新が止まってます!戻ってきてください!続き楽しみにまってます!(´;ω;`) (10月3日 23時) (レス) @page43 id: c7ac99c812 (このIDを非表示/違反報告)
はおと(プロフ) - おっもしろいな〜!!!!! (2021年9月28日 15時) (レス) @page36 id: 36f12069ba (このIDを非表示/違反報告)
Haoto(プロフ) - すごく続きが気になる終わりかただ~…。面白いので、更新、できたらで良いので書いてもらえたらすごく嬉しいです…!! (2021年8月30日 3時) (レス) id: e9d14425e3 (このIDを非表示/違反報告)
ナナ(プロフ) - 応援してます!頑張ってください! (2021年8月14日 14時) (レス) id: 5ba492e76b (このIDを非表示/違反報告)
しろ時雨(プロフ) - 主人公がかっこいい!憧れます! (2021年8月10日 8時) (レス) id: b4c51071c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雫月 彗 | 作成日時:2019年12月29日 19時