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「…は?」



彼から発せられた一言はあまりにも衝撃的な内容だった。



「だから、俺は今回辞退するって。」

「な、何故…」



私がここまで戸惑うのも理由がある。

彼も人間だ。
よく仲の良い3人と売上の競争をしているのを聞く。
そんなチャンスを放ってまで辞退する理由は。
何が彼をそうさせている。
頭をフル回転させるが、彼の意図はこれっぽっちも分からない。



「勘の鋭いお前なら分かると思ったんだけどなぁ…。」

「…。」



無言をNOと取った彼は呆気なく理由を話したのだった。



「あそこの娘って、結婚、せがまれてたでしょ?」

「えぇ、まぁ。」



それが何だと言うのだ。
まさか花魁を婿になんか迎える訳ではあるまいし。



「あ。」

「そ。そのまさか。」

「まだ何も言ってないです。」

「けど、きっと当たりだから。」



性格の悪そうな笑みが私を射止める。



「俺、A以外と結婚する気ねぇし。」



頭がよく働く事だ。
彼以外にこれに気付いている人は居るのだろうか。



「…他の皆様には?」

「いんや。言ってないよ。」



『だってライバルは少ない方がいいでしょ?』と、付け足された言葉は酷く独占欲に塗れているようだった。



「だからさ、A。今日は楽しもうよ。」



どさりと畳に縫い付けられる。
するりと手を絡ませられ、逃場はあっという間に塞がれた。



「Aはさ、警戒心が薄すぎるよ。」

「何を仰りたいのか私には理解しかねます。」



先程 紅を引いた形の良い唇が不自然な弧を描く。
何故そんな顔をするのだろうか。
彼に似つかわしくない、とても不自然な笑顔だ。



「最近の緑菊は、哀しそうですね。」



ぽろりと出た私の中の本音は彼を驚かせるのに十分だったらしい。
目を見開いた彼は、糸が切れた人形の様に私に倒れ込んできた。



「……お前が、好きで好きで、仕方ないんだよ。」



一言。
たった一言。
放たれた言葉に、溢れんばかりの想いを感じ取ってしまった私には、返す言葉が見つからなかった。

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設定タグ:浦島坂田船 , 歌い手 , 花魁
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ちょこ2(パソコン変わりました≪元ID 5ad0b4ef6a≫)) - 更新が止まってます!戻ってきてください!続き楽しみにまってます!(´;ω;`) (10月3日 23時) (レス) @page43 id: c7ac99c812 (このIDを非表示/違反報告)
はおと(プロフ) - おっもしろいな〜!!!!! (2021年9月28日 15時) (レス) @page36 id: 36f12069ba (このIDを非表示/違反報告)
Haoto(プロフ) - すごく続きが気になる終わりかただ~…。面白いので、更新、できたらで良いので書いてもらえたらすごく嬉しいです…!! (2021年8月30日 3時) (レス) id: e9d14425e3 (このIDを非表示/違反報告)
ナナ(プロフ) - 応援してます!頑張ってください! (2021年8月14日 14時) (レス) id: 5ba492e76b (このIDを非表示/違反報告)
しろ時雨(プロフ) - 主人公がかっこいい!憧れます! (2021年8月10日 8時) (レス) id: b4c51071c3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:雫月 彗 | 作成日時:2019年12月29日 19時

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