月華繚乱【浦島坂田船】

無邪気 ページ15

目の前で汚く矯声を上げるこの女の顔面をぶん殴ってやりたい。
狗のように泣き喚く姿は滑稽さの極みである。


汚い。


汚い。


汚い。


彼女の綺麗さを目の当たりにすれば、誰でもこうなると思う。
彼女だけが全てなのだ。
彼女だけが僕を構成するのだ。
僕には、彼女しかいないのだ。



「とても可愛えよ…。」



汚いと思うが故に顔を近付ける事もままならないが、目の前の感じまくっている女の思考では、そんな事も もう考える余地は無いのだろう。



「僕だけに捧げてな。」







その金だけを。


醜い言葉は切り取って。
仮初の言葉で着飾って。

女はそれだけで喜ぶ。
何て単純。
何て浅はか。

けれど彼女と僕の為に出してくれるその金だけは、僕がこの汚ならしい女共を好きになれる唯一の材料なのだ。
こいつらも嬉しいでしょ？
僕の為だけじゃなく、僕らの生活にまで協力できるんだよ？
こんなに幸せな事ってないでしょう？





僕がこの汚い女共を愛せるのはそういう事。









「さぁ。もっと乱れよか」









彼女の為だけにしか僕は働けない(働かない)のだ。

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