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その囁きと共に、帯を持たされる。
誘導されるがままに彼に手を引かれていく。
ゆっくりと私が彼の内掛けを脱がしていく。
正しくは彼の手によって、だが。
「やめて下さい、紫薔薇。…貴方とこういう事はしません。」
「……じゃあやり方、変えよかな。」
「え?」
ぐい、と腕を引かれていきなり姫抱きにされる。
人1人を抱えているとは思えないスピードですたすたと歩いていく彼。
眼が点になるとは正にこの事であろう。
どさりと落とされたのは彼の布団の上で、ほんのりと彼の甘い香りが漂う。
にやりと笑った彼は、何ともありきたりな誘い文句を私に向けたのだった。
「わっちと遊んでおくんなまし。」
はらりと一掬い程の彼の美しい髪が垂れる。
彼の髪は少々特殊で、白髪混じりの紫髪なのだ。
何故そんな色をしているのかというのは、只の遺伝なのだそう。
髪にまで才があるとは、流石 期待の新人といったところか。
「何、考えとんの?」
するりと腰のラインをなぞられる。
くすぐったさに腰を捩れば、彼は余裕の笑みで私を見やる。
「Aの方がよっぽど花魁、向いてんと違う?」
ちらりと障子に眼をやれば、人影がちらほらと通っていく。
ここで声を上げれば一発で人が来るだろう。
但し、この恥態を見せる覚悟があるならの話だが。
「余所見たぁ、随分余裕がおありなもんで。」
このまま大人しく彼に喰われるか、否か。
.
「おっはよー! 志麻君!! 朝やでぇ!!!」
空気の読めない奴で助かった。
「お早う御座います。赤桜。助けて下さい。」
え?え?と困惑の声を上げる彼の名を呼べば、紫薔薇は一気に溜息を吐き出す。
その仕草1つ1つに色香を漂わせるのだから、何とも言い難い。
「坂田…。雰囲気ぶち壊しや。」
ぴょんぴょんと跳ねる髪とその笑顔は、正しく彼の天真爛漫さを表しているかの様だった。
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ちょこ2(パソコン変わりました≪元ID 5ad0b4ef6a≫)) - 更新が止まってます!戻ってきてください!続き楽しみにまってます!(´;ω;`) (10月3日 23時) (レス) @page43 id: c7ac99c812 (このIDを非表示/違反報告)
はおと(プロフ) - おっもしろいな〜!!!!! (2021年9月28日 15時) (レス) @page36 id: 36f12069ba (このIDを非表示/違反報告)
Haoto(プロフ) - すごく続きが気になる終わりかただ~…。面白いので、更新、できたらで良いので書いてもらえたらすごく嬉しいです…!! (2021年8月30日 3時) (レス) id: e9d14425e3 (このIDを非表示/違反報告)
ナナ(プロフ) - 応援してます!頑張ってください! (2021年8月14日 14時) (レス) id: 5ba492e76b (このIDを非表示/違反報告)
しろ時雨(プロフ) - 主人公がかっこいい!憧れます! (2021年8月10日 8時) (レス) id: b4c51071c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雫月 彗 | 作成日時:2019年12月29日 19時