petrichor (ページ10)

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電話が切れてから数十分ほどで鳴るインターホン。

いつも通り扉を開けると深く被ったキャスケットとマスクで顔の殆どが隠れた海人くんの姿。

そして同時に漂う海人くんの甘い香りにクラクラする。

部屋に入るなり、はいコレ。とコンビニの袋を渡され中を覗くと大量のアイスが入っていた。

『...どうして突然アイス？笑』

不思議そうに彼を見上げる。

「んーだって最近A元気なさそうだったじゃん...
甘いもん好きでしょ？食べたら元気になるかと思って」

目を逸らしてはにかみながら話す彼を不覚にも愛おしいと思った。

ああ、もうだめかもしれない。

必死に蓋をしようとした気持ちは簡単に溢れ出すもので、もう認めざるを得なかった。

　

ねえ海人くんはなんとも思ってない女の子にもこんなことするの？

そんな黒い感情が渦巻く自分を嫌いになりそう。

でも....

確かめてみたい。自惚れかもしれないけど、本気なわけないって思ってた海人くんの言葉を信じてみたい。

『...海人くん』

　

「ん？」

『...海人くんは私のことどう思って「♪Prrr...

私が言い切る前にはたまた鳴る着信。

それは海人くんのケータイから鳴る着信で。

「、ごめん」

申し訳なさそうに手に持っていたケータイの画面を確認する海人くん。

神様はことごとく意地悪だ。

海人くんが着信相手を確認しようとした拍子に、私にも見えてしまった液晶画面。

“カレン”

明らか女の子の名前、

ああ、やっぱり。

何か鈍器で頭を殴られた感じ。