petrichor (ページ9)

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あれからというものの海人くんとは変わらず名前の無い関係。

あんな事があって動揺していた私が馬鹿みたいなくらい通常運転な彼。

相変わらずメッセージは来るし、暇さえあればうちにきて一緒に晩御飯を食べる。

あの時、海人くんの問いに“正しく”答える事が出来ていたらこの関係に名前をつけることができていたのだろうか。

気付きつつあるこの気持ちに蓋をしたのは他の誰でも無い自分なのに、ふたりの関係に名前をつけたがっている時点で蓋なんてものははなから無かったのかもしれない。

今まで恋愛なんてってどこかで思ってたのに自らこんな気持ちになるなんて...

しかもよりによってどうして彼なの。

“おねーさんのこと気になるっていったらどーする？”

あんなの本気なわけないよね。

アイドルの彼が一般人の私に本気になるわけがない。

自信なんか無いくせに、蓋をすることもできない気持ちをいつまでも持ち続ける自分が情けなくなる。

♪Prrr....

突然鳴り出した着信に画面を確認すると、そこにはumiと表示されていた。

悩んだけれど、しぶとくなり続ける着信に7コール目で応答ボタンをタップした。

『...もしもし？』

「お、やっと出たー
今コンビニいるんだけどアイス何味がいー？」

『え、アイス？いきなりどうしたの？』

「いーから！あ、じゃあーバニラかいちごどっちがいー？」

『...いや、え？突然アイスの話？』

「はあ、も〜いいや適当に選んじゃうからね
てことで今からAんち行くね〜」

私が返事をする隙などなく、そう言い残すと彼は一方的に電話を切った。

ほんと、自由すぎる...

気分屋さんなことは薄々わかったいたけど、本当に突拍子のない彼に振り回されっぱなしだよ...