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「やほー来ちゃった」
扉を開けた瞬間漂う甘い香り。
寒いから早く入れて〜なんて呑気すぎにも程があるんじゃ...
『...ねえ、アイドルがこんなことしてていいの?』
晩御飯のハンバーグを隣で頬張る彼を横目に見る。
「アイドルだってプライベートくらいあるってことよ」
『...答えになってない』
「俺がAに会いたいの」
『っ!』
ほら、そうやってサラッと勘違いしちゃいそうなこと言う...
「なーにおねーさん照れちゃった?笑」
『揶揄わないで!もー私じゃなかったら勘違いしちゃうんじゃな...ってきゃっ!』
気付くと背中に感じるラグの柔らかさと、目の前には海人くんの顔と天井の景色。
押し、倒されてる...?
一瞬の出来事についていけない頭をフル回転する。
「Aは勘違いしてくれないの?」
『、え?』
「勘違いしてよ」
お互いの鼻と鼻がくっついてしまいそうなくらいの近さに息することも忘れそうになる。
『、それって...「♪Prrr....
静まった部屋の中に響く着信
海人くんのものだ。
『海人くん、鳴ってる...』
「いーから、
ねえ、Aは俺のことどう思ってるの」
『どうって...』
どう答えたら正解なのかがわからず濁す私にか、懲りずに鳴りつづける着信にか、海人くんはため息をつき、私の上から体をどかし鳴りっぱなしのケータイをとり部屋から出て行った。
なんとなく、なんとなくだけど今吐いた海人くんのため息の理由は前者だと思った。
一瞬にして消えた熱にどこか寂しさを感じでしまった自分を気づかないフリをした。
この生まれたての感情に名前をつけてしまったらいけない気がして、崩れてしまう気がして。
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作者名:さちゃん | 作成日時:2022年2月11日 12時