petrichor (ページ5)

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「Aはさ、俺がいなくても平気そうだよね」

久しぶりのオフでいつもは家に篭ってゲーム三昧だけどなんだか退屈でひとりフラッと入った夜カフェ。

夜カフェだけあって昼間とは違う落ち着いた雰囲気と、斜め前の卓で繰り広げられている不釣り合いな会話。

人の不幸を笑うほど最低な人間ではないけど、こういう場面に出くわすことなんてそうそうないからなんか気になっちゃうよね。

最低だけどケータイに視線を落とすふりをして少しだけ聞き耳を立てる。

自分の言い分は伝え切ったのか、彼氏だったであろう男性は彼女の返事も待たず、荷物を持って店を後にする。

あーあ、

さすがにあれは彼女チャン泣いちゃうんじゃない？

半ば他人事のように可哀想なんて思いながら、チラッと斜め前の卓に視線を向けると、男性が席から消えてさっきまで見えなかった女性の姿が見えた。

...へー美人なおねーさん

確かに男なんていなくても生きていけそうな感じ。

でもどうしてだろう。

冷めたコーヒーを呆然と見つめているおねーさんはなんだか儚くて消えそうで、不覚にも綺麗だなんて思ってしまった。

しばらくして店を出ようとするおねーさんをなんかほっとけなくて、会計を済ませて後を追うように店を出た。

ふと我に返って俺は馬鹿かと、こんな浅はかな行動して海斗に怒られるかもとか思ったけどやっぱりおねーさんが気になってる自分がいて。

気づいた時にはもう声をかけていた。

驚いたように俺に視線を向けるおねーさん。

やっぱり正解。

馬鹿だけど運命かもとかクラみたいにクサいこと思っちゃってる俺。