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『...ごめん、今日はもう帰って』







「は?」







『っ、この後予定あるの忘れてたの。だから今日は、っ!』










気づくと唇に柔らかい感触と背中に感じる壁の冷たさ。







『っっ!』





「って」








突然のキスに驚き、思わず海人くんの唇を噛んでしまった。







うそ。これって、キス...だよね...





フリーズする頭を必死に回転させるけどたぶん無意味。






おそるおそる見上げると、私を見下ろす海人くん。





もしこの視線から逃げることができた人がいたら教えた欲しいくらい。








ねえどうしてそんな顔するの。



どうしてそんなに優しく私に触れるの。



さっきのキスの意味はなに?



聞きたいことは山ほどあるのに、喉につっかえて全て声にならず消えてく。





いつのまにか私の腰に回る海人くんの腕が熱いのに心地良いなんて。







「ん。」






『へ?』






「ほら、コーコ。A噛んだでしょ」





海人くんは私と同じ目線まで屈むと唇を尖らせる。





『ご、ごめっ...手当て、したほうがいいよね』






救急箱どこにしまったかななんて呟きながら海人くんの腕から抜け出そうとすると、それは彼によって阻止されてしまった。







『え、ちょ離して...』





「ちーがーうでーしょ。ほら、ン!」





目の前で唇を尖らせる海人くんにポカンとしてると、しびれを効かせた彼はさらに強く私の腰を引き寄せた。






「キスしてよ」






『へ...』





早く〜なんて私を急かす彼はなんだか余裕で、こんなにも顔が熱いくせにもしかしてこうやって女の子を弄んでるの?なんて考えてる自分がいる。







私を見つめる大きな黒目がちな瞳はキラキラしててすぐにでも吸い込まれてしまいそう。







でも...だめ騙されちゃ...








『と、兎に角!今日はもう帰って!』










絞り出した答えは間違えだったのだろうか。





正解も不正解も無いはずなのに、ちらつく彼の切なそうな顔を見てやっぱり不正解だったのかもなんて。

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作者名:さちゃん | 作成日時:2022年2月11日 12時

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