petrichor (ページ11)

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画面を確認すると一瞬苦い表情をする海人くん。

もういい大人なんだし、そんな彼の表情ひとつでなんだが2人の関係が読み取れたりして...

特別頭がきれるわけじゃないくせに、こんな時ばっかりカンってやつが鋭いんだよね。女ってほんと嫌。

たった数秒の出来事のはずが私には数十分たってしまったんじゃないかってくらいスローモーションな瞬間。

海人くんは着信には出ず、再びケータイをデニムのポケットにしまうと私の顔を覗き込む。

「、ごめんなんて言おうとしたの？」

なんか目が覚めたのかもしれない、

私って海人くんのなんでもなかったんだった。

厚かましいけど勝手に彼の特別なんじゃないかって、もしかしたら彼も私と同じ気持ちなんじゃないかって...

勘違いにもほどあるよね、急に恥ずかしくなって虚しくなって目頭が熱くなる。

『...っごめん！なんて言おうとしたか忘れちゃった。...電話大丈夫？友達と予定あったらそっち行ってもらっていいから、』

「いや、電話は大丈夫。それより忘れたとか嘘でしょ。本当はなんて言いたかったの？」

『本当に忘れたちゃったの、思い出したら言うから』

「嘘つけ、目も赤いし。ねえ俺、Aが嘘ついてる時くらいわかるから」

逃げられるはずもないのに、逃げ出したい私に気づいているのか海人くんが私の手首を掴む。

なかなか引いてくれない海人くんにだんだん心が限界に近づいていく。

言えるわけないじゃん、どうせ困るくせに。

わかって欲しいけどわかった欲しくない。

これじゃまるで、駄々をこねる子供と一緒。

海人くんのことになるとどんどん自分が嫌になる。

どうしたらいいの...