守れなかった ページ12
_____〈無一郎side〉続き
Aに落ち着いてもらうためにポンポンと背中を叩く。すると小さい子供みたいに眠りについた。
さっき抱きしめたときは嫉妬の真っ最中で気づかなかったけど、こんなに小さかったんだね。身長は同じなのに。
細くて強く抱きしめたら折れてしまいそうだった。
そういえばさっき抱き上げたときだって軽かった。兄さんを抱き上げたときとは重さが全然違った。←
炭「…どうしたんだ!大きな音がすると思ったら…って時透くん?」
先輩を見た瞬間、また怒りが湧いてきた。
Aを起こしたくなくて冷静を装って言う。
無「大きな音がしないと気づかないんですか?人が助けを求めている声も」
炭「何の…話だ、」
これが「何の話?」で済むと思ってんの?どんだけAが長い時間恐怖と戦ってたと思ってるの?
無「Aはずっとここで助けを求めてたんですよ。1人で戦ってました。このクズと」
僕があごでクズをさすと、先輩はヒュッと顔が青ざめた。やっと状況を理解したのか。
無「こんなに近くにいたのに気づかなかった、で済むと思いますか?」
炭「……Aちゃんは?」
無「運良く僕の兄に電話が繋がりましたけど多分それがクズにバレて叩かれてます」
僕はそっとAの赤くなった頬に触れる。すると小さな呻き声が聞こえた。
炭「すまなかった!」
先輩はいきなり頭を下げて謝ってきた。
無「謝るならAが起きてるときに謝ってよ」
炭「時透くんもAちゃんをとても大切にしているから、今は時透くんに謝ったんだ」
“時透くん
この人やっと自覚したのかな。
無「もういいです。このクズ、警察に引き渡してください。僕はAの親に連絡するから」
炭「ああ…本当にすまなかった」
先輩はポケットから携帯を取り出して警察に電話をかけてくれた。
Aの両親にどうやって説明しよう。
僕が守れなかったんだ、Aを。もしかしたら二度と会わせてくれなくなるかもしれない。
昔Aと約束したのに。何かあったら必ず助けに行く、って。守れなかったら意味ないじゃないか。
今Aがそばにいてほしいのはきっと両親だ。
無「…あ、もしもし。おばさんごめんなさい_____」
事情を説明するとすぐにおじさんとおばさんが来てくれた。
母「ありがとう、無一郎くん。また助けてくれて」
無「…守れなくてすみません」
父「ううん。君はAのところに一番にかけつけてくれて守ってくれたじゃないか」
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作者名:いちか | 作成日時:2020年8月5日 18時